……ん~?あなた先輩のこと…?
他のヤツらに聞いて…。え?取材拒否?
じゃあしょうがないよね。
諦めな。
それじゃ…ふぁあ…おやすみ…zzz
ーーーアイマスクをして閉ざした視界の中、俺はなんとなく先輩と出会った日のことを思い出していた。
◆◇◆◇◆
空調設備の整った保健室。
静かなその部屋で昼休みに仮眠をとるのが俺の何の変哲もない日課になりつつあった。
けれど。
ゴンッ!
急に額に走る衝撃。
その痛みで思わず目を覚ませば、側に落ちていたのはゴムボールだった。
……何で?
開けっ放しになっていた保健室の窓から顔を除かせたのは綺麗な顔の上級生?だった。
その人は涙目で俺に謝ってきたから、わざとじゃないってのはよくわかったけど…。
何それ。それで保健室の窓から入ってきて俺に当たるって…どんな確率?
一転してニコニコと笑う。
感情の振れ幅大きくない?
頭の出来のことで騒がれるのは慣れてるから、取りあえず早く寝直したい。
弟とやらのことが気にならないわけじゃないけど。
俺が言葉を遮ったことも気に留めず、俺の前に差し出されたのは
何で?
俺が言うのもなんだけど、普通こんなところで特に理由もなく寝てたら注意すると思うんだけど。
しかもアイマスクって寝ることを勧めてるよね、確実に。
てか何でこの人、今こんな物持ってんの?
それは今まさに俺が考えていたことだった。
人間は、自分の理解の及ばない事象に遭遇したとき2つのパターンに分かれる。
その事象を畏怖するか、興味を持つか。
そして俺は…
興味を持つ。
今までこんなに理解不能な人には出会ったことがなかった。
だから純粋に面白そうだと思った。
全てが理解出来る俺の日常でこんな感情を持ったのは久しぶりだ。
◆◇◆◇◆◇
今日も転がっていったボールを反射的に投げてしまったあなた先輩。
成る程、今回の被害者は松本か。
軌道が最早物理法則を無視してるからね。
理解出来ないことは面白い。
俺は慌てて松本を介抱しているあなた先輩を見ながらそう思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。