受験対策講座を終えた放課後。
家に帰ろうとしていたら背後からいきなり不意打ちをくらった。
俺に抱きついて離れないカズくんをベリッと音がしそうな勢いで引き離すヒロくん。
まぁ俺は敦くんで耐性がついてるし、カズくんが飛び付いてくることも、彼なりの愛情表現だってちゃんと理解しているから迷惑だなんて感じたことは一度も無いんだけど…。
こういう律儀なところもヒロくんの良いところだから、いつも俺は2人のやりとりを見守ることにしている。
じゃれ合ってる2人をスルーして俺に声をかけてきた康くん。
今日の練習もハードだったのだろう。一見無表情に見える顔には少し疲労が浮かんでいたので、労いの意味も込めてよしよしと頭を撫でてあげると少し嬉しそうだった。
被せるように喋ってしまうのは健くんの癖のようなものだから特に気にしていない。
けど、
やっぱりヒロくんが俺に気を使って健くんを叱り飛ばす。
俺はヒロくんを宥めるついでに提案してみた。
あ。
再び俺に抱きつこうとしていたカズくんの肩を掴んで、満面の笑みを浮かべる真。
気がついたら他の3人は(‐人‐)な感じで距離をとっていた。
真が来たことわかってたんだね。
バスケ部主将の握力に悲鳴をあげて俺に助けを求めてくる。
真による死刑宣告に、カズくんは顔を真っ青にして震えている。
うん…明日はバスケ部に差し入れ持って行こう。
じゃないとカズくんの命が危ない。
真が落ち着いたのを見計らって、3人も戻って来たところで俺は弟と後輩たちと一緒に店へ向かった。
◆◇◆◇◆◇
SBWAYでそれぞれが好きなサンドを注文して席につく。
確かに真たちの頼んだやつよりは高いけど、喜んで食べてくれるなら俺も奢った甲斐があるから嬉しいし。
(ちなみに真はBLT、康くんはツナ、健くんはアボガド)
うん、やっぱり明日は差し入れすべきだね。
ヒロくんの命も危険だ。
今回はたまたまシフトの関係でバイト代が多めに入っただけだし。
俺が笑顔でそう言いきると、何故かその場の空気が固まった。あれ?
健くんの言葉の意味がよくわからなくて目を瞬かせた俺に、健くんがため息を吐いていた。
情けは人の為ならず。
(全て自分の為なのです。)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。