第5話

情けは人の為ならず
1,130
2020/09/01 23:15
原一哉
原一哉
セ・ン・パーイ!
(なまえ)
あなた
おぅふっ!
受験対策講座を終えた放課後。
家に帰ろうとしていたら背後からいきなり不意打ちをくらった。
山崎弘
山崎弘
おい原ァッ、先輩見つける度に飛び付くんじゃねぇ!花宮から八つ当たりされるの俺なんだぞ!それにあなた先輩にもメーワクだろ!?
俺に抱きついて離れないカズくんをベリッと音がしそうな勢いで引き離すヒロくん。

まぁ俺は敦くんで耐性がついてるし、カズくんが飛び付いてくることも、彼なりの愛情表現だってちゃんと理解しているから迷惑だなんて感じたことは一度も無いんだけど…。

こういう律儀なところもヒロくんの良いところだから、いつも俺は2人のやりとりを見守ることにしている。
古橋康次郎
古橋康次郎
……お疲れ様です。あなた先輩。
(なまえ)
あなた
あ、康くん。康くんたちも今帰り?
古橋康次郎
古橋康次郎
はい。
(なまえ)
あなた
そうなんだ。お疲れさま。
じゃれ合ってる2人をスルーして俺に声をかけてきた康くん。
今日の練習もハードだったのだろう。一見無表情に見える顔には少し疲労が浮かんでいたので、労いの意味も込めてよしよしと頭を撫でてあげると少し嬉しそうだった。
瀬戸健太郎
瀬戸健太郎
先輩。
(なまえ)
あなた
あ、健くん。お疲れさま。ま
瀬戸健太郎
瀬戸健太郎
花宮ならまだ部室です。
(なまえ)
あなた
ははっ、相変わらず話が早くて
助かるなぁ。
被せるように喋ってしまうのは健くんの癖のようなものだから特に気にしていない。
けど、
山崎弘
山崎弘
瀬戸!お前もあなた先輩の言葉に
被せんな!
やっぱりヒロくんが俺に気を使って健くんを叱り飛ばす。
(なまえ)
あなた
大丈夫だよ、ヒロくん。
(なまえ)
あなた
そうだ!これからみんなで一緒にSBWAYでも行こっか。
いつもまーくんに付き合ってくれるお礼に好きなの奢ってあげるから。
俺はヒロくんを宥めるついでに提案してみた。
原一哉
原一哉
マジで!?
(なまえ)
あなた
マジだよ。
原一哉
原一哉
センパイ大好きー♪
???
へぇ…誰が誰を大好きなんだ…?
花宮真
花宮真
ねぇ、原クン(にっこり)
あ。
原一哉
原一哉
Σ!?ぎゃー!!
再び俺に抱きつこうとしていたカズくんの肩を掴んで、満面の笑みを浮かべる真。

気がついたら他の3人は(‐人‐)な感じで距離をとっていた。

真が来たことわかってたんだね。
原一哉
原一哉
痛い痛いっ!肩折れる!
センパイ助けてぇー!
バスケ部主将の握力に悲鳴をあげて俺に助けを求めてくる。
(なまえ)
あなた
まーくん、今日もお疲れさま。
そろそろ手を離してあげて。
みんなでSBWAY行こう。
花宮真
花宮真
…………チッ。
原ァ、明日覚えとけよ。
原一哉
原一哉
ひぇえぇ…。
真による死刑宣告に、カズくんは顔を真っ青にして震えている。
うん…明日はバスケ部に差し入れ持って行こう。
じゃないとカズくんの命が危ない。
真が落ち着いたのを見計らって、3人も戻って来たところで俺は弟と後輩たちと一緒に店へ向かった。
◆◇◆◇◆◇
SBWAYでそれぞれが好きなサンドを注文して席につく。
原一哉
原一哉
えびうまー。
山崎弘
山崎弘
原、てめぇ少しは遠慮しろ!
普通に高ぇやつ頼んでんじゃねぇよ!
原一哉
原一哉
ザキだって照り焼きじゃん。
んな値段変わんないでしょ。
山崎弘
山崎弘
ぐ…せ、先輩が遠慮するなって…!
花宮真
花宮真
テメェら2人とも同罪だバァカ。
(なまえ)
あなた
まぁまぁ。
せっかくみんなで来たんだから、
怒らない怒らない。
確かに真たちの頼んだやつよりは高いけど、喜んで食べてくれるなら俺も奢った甲斐があるから嬉しいし。

(ちなみに真はBLT、康くんはツナ、健くんはアボガド)
古橋康次郎
古橋康次郎
先輩すみません。
あの2人は明日肘打ちエルボーの刑に処して
おきます。
(なまえ)
あなた
康くん目が本気だよ…。
古橋康次郎
古橋康次郎
本気ですから。
うん、やっぱり明日は差し入れすべきだね。
ヒロくんの命も危険だ。
瀬戸健太郎
瀬戸健太郎
先輩…あの2人は甘やかすと調子に
のるから。
(なまえ)
あなた
甘やかしてるつもりはないんだけど…。
今回はたまたまシフトの関係でバイト代が多めに入っただけだし。
(なまえ)
あなた
それに、俺は自分のためにしか動かないよ。奢るのだってみんなの喜ぶ顔を俺が見たいからだしね。
俺が笑顔でそう言いきると、何故かその場の空気が固まった。あれ?
瀬戸健太郎
瀬戸健太郎
はぁ…花宮も気苦労が絶えないね。
これは…。
(なまえ)
あなた
え?
瀬戸健太郎
瀬戸健太郎
いえ、なんでも。
健くんの言葉の意味がよくわからなくて目を瞬かせた俺に、健くんがため息を吐いていた。





情けは人の為ならず。
(全て自分の為なのです。)

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