『どうしようかな』
夜まであった予定が全て無くなってしまった私は
ただその場に立ちすくむ事しか出来なかった。
今から帰るにしてもいくらなんでも早すぎる。
それにいま部屋で一人になってしまうと絶対に泣いてしまうから駄目だ。
何か気を紛らわす事でもしとかないと。
そう思いながらさっき取り出した涼介への誕生日プレゼントを鞄にしまい、
どこかのショップにでも寄って時間を潰そうと歩き出した時だった。
「あれ…、あなたちゃん?」
『へ?』
私の名前を呼ぶ声の方へ身体を向けるとそこには
帽子を深く被りサングラスをした男の人が立っていた。
『もしかして有岡さん、ですか?』
最初誰かと思ったけど彼の声がどこかで聞いたことがあるような気がして半信半疑でそう問いかけてみると、
「あー、やっぱりあなたちゃんじゃん!てかやだなー。大ちゃんでいいって言ってんのに」
そう言ってサングラス越しから目を細めて笑う有岡さんが居た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。