その日私は夢を見た。
私と涼介が付き合いだした頃の懐かしい夢を。
『あ、あのね…私涼介のこと好きなんだ』
消え入るような小さな声で呟くと彼は眩しいほどの笑顔で
「俺もだよ」
そう言ってくれたんだ。
「あなたはさ、ふわっとしたイメージだから、」
こういう淡い色が似合うよ。
そう言って私に似合う服を一所懸命に探してくれた彼。
「お前の悪い癖はなんでもすぐ溜め込むとこだよ」
そのままだとストレス溜まって身体壊すぞ。なんて心配してくれたっけ。
「なんかあったら俺に頼れ、すぐ飛んでくから」
そんな優しい彼の存在は私の中で益々大きくなっていった。
かけがえのない存在になっていたんだ。
『涼介、』
「ん?」
『やっぱりいいや、』
「なんだよー、言えよ」
『好き』
「ははっ、なんだそれ」
『ほらー、笑われるから嫌だったんだよ』
「ははっ、ごめんごめん」
『笑わないでよ、余計に恥ずかしくなるじゃない』
「なあ、あなた」
『な、なに…?』
「俺も、あなたが大好き」
なんてな。そう言って優しく笑って私にキスをしてくれた彼が堪らなく大好きだった。
例えそこに貴方の気持ちがなかったとしてもあの時の私は本当に幸せでした。
さようなら、涼介。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。