「山田お前なにやってんだよ」




まるで凍りついた様に動けなかった私をふと我に戻したのは




未だ私達の存在に気付いてない涼介達に



凄い見幕で怒鳴りながら近付いていく大ちゃんの姿だった。





「な、なんで大ちゃんがここに」




大ちゃんの大きな声にこちらに振り向く涼介。



驚きをただ隠せない表情で大ちゃんを見つめていた。




「(名前)…、」




ふと涼介が私の存在にも気付き数秒間いやほんの一瞬彼と目が合ったと思う否や、




未だ女性を抱き締めたままで居る涼介の胸ぐらを物凄い勢いで大ちゃんが掴み合げたのだ。




「お前自分がなにやってんのか分かってんのか」

「…………」




そんな彼の必死な言い分へ何も応えず黙り込んだままの涼介に我慢出来なくなったのか



大ちゃは握り拳を涼介に向かって大きく振りかざした。




『大ちゃん…駄目っ』




このままじゃ涼介が殴られてしまう、


そう思って大ちゃんを止めに入ろうとした瞬間だった。




「やめてっ、」



私より先に大ちゃんと涼介の間に入ったのはさっきまで涼介に抱き締められていたあの人だった。




「なっ、どけよ…っ」



「お願いやめて、涼介が悪いんじゃない。殴るなら私を殴って」




凄い気迫に留まる大ちゃん。



まさか女性に手を上げるわけにもいかないので振りかざされた拳は静かに降り下ろされる。




「涼介、大丈夫？」

「ああ」




大ちゃんから解放された涼介を目に涙をいっぱい溜めて心配そうに



介抱するその人を私はただ見つめる事しか出来ない。



私はこんな時なのに何も出来ない自分の無力さにただ呆然とするしかなかった。