『あ、ご、ごめんなさい。私ってばなに泣いてんだろっ』
えへへ、最近涙腺緩くって。
そう言いながら私は自分の腕でごしごしと涙を拭う。
「あなたちゃん、」
『ほんと気にしないでくださいっ、はは、どうしたんだろ私』
「ねえ、あなたちゃん」
『…なんですか?』
さっきから涙腺が緩みきって壊れたかのように
自分の目から溢れ出る涙を止めようと必死になる私に対して彼は口を開きこう言ってみせたのだ。
「このあとも時間ある?」
『え?』
「良かったら俺の買い物付き合ってよ」
そう言った途端、返事を返す暇もないくらいの速さで
私の腕を掴みカフェから出ようとする大ちゃん。
『なっ、ちょ、』
「あなたちゃん泣きたい時はいっぱい泣け」
大ちゃんは今だ私の腕を掴みながら話し続ける。
私はそんな彼の歩幅に合わせて歩くのに必死だった。
「んで今いっぱい泣いた分、今日は俺がその倍楽しませてあげるから」
『っ、』
そう言って私が泣いた理由を聞いてくるわけでもなく
ただ眩しいくらいの笑顔で笑いかけてくれる彼の優しさに
胸がいっぱいになったのは言うまでもない。
『有岡さん、あり、がと…っ』
「もう、だから大ちゃんでいいって言ってるでしょー」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。