第12話

episode12
1,072
2018/04/09 06:09
涼介の誕生日から数日が過ぎた。


あの日渡すはずだったプレゼントも結局渡せず終いで



今では引き出しの奥隅に入ったまま。




あのとき彼から付けられた首筋の跡も今ではすっかり綺麗に無くなっていた。





『…やっぱりでないか』





久しぶりに涼介の声が聞きたくなって電話をかけるが




一向に聞こえてくるのは呼び出し音だけで。




『あんまりしつこいのも駄目よね』





きっと仕事か何かで忙しいんだろう、


そう言い聞かせ電話を切ろうとした時だった。




「もしもし?」




耳から携帯を離した瞬間、小さく返答の声が聞こえてきたのだ。



私は直様携帯を耳に当て直した。




『涼介?』



「…その声もしかしてあなたちゃん?」

『え?』



携帯越しから聞こえてきた声は私が思っていた人物とは違っていて、



『あれ、もしかして大ちゃん?』



「あ、やっぱあなたちゃんだ」




なぜか涼介に掛けたはずの電話に出たのは大ちゃんだったのだ。

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