「さ、今日はどこで遊びますか」
さっきの雰囲気を変えるかのように明るいトーンで話す彼に
私も余り深く追求してはいけない気がして何事も無かったように振舞う。
彼のさっきの表情を見てもしかして、
なんてそんな事を考えてしまう私は自惚れすぎだ。
自分に対して都合の良すぎる思考回路に心の中で苦笑した。
図々しいにも程がある。
「にしてもあなたちゃん今日はかなりラフな格好だね」
『へ?』
自己嫌悪に陥る私をふと我に戻したのは気の抜けそうな大ちゃんの声で、
「いや、その格好」
なんか動きやすそうと言うかなんと言うか、なんて話す彼の言葉にハッとする。
そうだ私、部屋着のままここに来たんだった…っ
『あっ、いやこれは!』
こんな人通りの多い場所で明らか浮いた格好をしている自分に
今になって恥ずかしさがこみ上げてくる。
ああああ、恥ずかしい。
私は取りあえず熱くなった頬を両手で隠してその場でジタバタと無意味な動きを繰り返す。
「ははっ、俺が迷子にならないように急いで来てくれたんだろ?」
『そ、そうなんだけど…』
いや、でも我に返るとこの格好でうろちょろするのはかなり恥ずかしいです。
なんて消え入りそうな声で呟くと大ちゃんは大きく笑って
「じゃあ、まずはあなたちゃんの着替えが済んでから遊びに行こっか」
と気遣ってくれる彼に頭が上がらなかったのは言うまでもない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。