あなたside
「──と、いうことなのですが、どうでしょうか学園長?」
クロウリー「……グリムくんの思いはしっかり伝わりました。…ですがやはり決定を覆すのは…」
学園長は俯き気味に顎に手をあてている。
どうしようか迷っている様子だ。
そう思っていれば、名案を思い付いたとばかりにパッ!と顔を上げた。
クロウリー「そうですよ!あなたさん!あなた、この学園に入学して彼の面倒を見てください!!」
「は、はぁ!??」
おっ……とヤバい素が。
取り繕うようにコホンと一つ咳をして向き直る。
「……申し訳ありませんがお断りします。私にも元の生活というものがありますので」
クロウリー「そんなことを言わずに。グリムくんもあなたが入学してくれないとここに入学させるワケにはいきません。そうなれば魔法士として強くはなれませんよ?ほら、グリムくんからもからもお願いしてください」
グリム「頼むんだゾ……!!」
うっ……それを言われるとなぁ。
強くなるように言ったのは私だし。
…でも。
私はここに留まっているワケにはいかない。
探さなきゃいけないものが……って、あれ?
クロウリー「元の世界に帰る方法が見つかるまででも構いませんので!」
思考に集中しているせいか、学園長の声が遠くに聞こえる。
今まで違和感を感じる程度ではっきりとは思わなかったけれど。
私、なんでこの世界を知らない?
魔法のある世界は回りきったはずの私が見たことも聞いたこともない世界なんて…。
他のどんな世界にも、“探しモノ”はなかった。
この、世界に、もしかすると。
あるのか、それが。
口元に笑みが広がるのがわかる。
「──わかりました。受けます。その話」
クロウリー「本当ですか!!良かったです!」
ま、この世界にもなかったとなれば帰れば良いし、私にとっても良い話だ。
クロウリー「(にしても、どうして急に…まぁ、そんなことはどうでも良いですね)」
グリム「良いのか…!?感謝するんだゾ…!」
こうして、ナイトレイブンカレッジに入学し、グリムと一緒に通うことが決定した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!