私が泣きながら睨むと面倒くさそうにため息を吐いた。
こういうところ、本当に私の胸をチクチクと刺激してくる。
めんどくさい女って思われてるだろうな。
…なにその自分勝手な考え。
私が昨日、一体どんな思いでっ…
私の心の声が聞こえてるみたいに、タイミングよく言葉を発するくせに。
口を開けたら何故かまた涙も同時にぽろぽろと溢れ始める。
眉一つ動かさないおっぱ、何考えてるの?
一度話し始めれば、言いたくないのにどんどん言葉が溢れてくる。
嗚咽が混ざってうまく喋れない。
掴まれていない右手で必死に涙を拭いながら話す。
もう自分でも何言ってるのかよくわかんない。
こんな泣いたりして、訳わかんないこと喋って、ほんとガキみたいって自分でも思う。
恥ずかしいし、こんなはずじゃなかったのに……
でも今、おっぱに全部吐き出しちゃおうと思った。
そう決めたら、必死に言葉を繋いでいく。
そこまで言うと、手を強く引かれてそのまま抱きしめられた。
気付くとおっぱの腕の中。
コートからは、外のにおいとおっぱのにおい…それから、わずかに知らない香りがした。
また何故か涙が滲む。
嗚咽が漏れて上下する身体を、おっぱが強く抱きしめている。
少し、痛いくらいに。
これは、なんのハグなんだろう?
慰めのハグ?
謝罪のハグ?
それとも、保護者としてのハグ?
こんな時だけ優しくするなんて、本当におっぱはずるい。
思えば、初めて会った時からそうだった。
言葉遣い悪くて人のこと小馬鹿にしてるくせに、いざというときに優しい。
わかってやってるの?
私のこと弄んでるの?
もう、それでもいいかな…
私はおっぱにとってただのガキなんだから。
おっぱの肩をグーで叩く。
びくともしない頑丈な身体
男らしい背中
私を包むあたたかな腕
大切にしてくれるとこ
私を助けてくれたとこ
自信たっぷりで俺様なとこ
それに、ずっと相槌を打ってくれるこの優しい声。
こんなに泣かされてるのに、自分でも本当におかしいって思うけど。
おっぱの全部が、大好き。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!