急いで階段を降りると、見慣れない車が停まっていた。
綺麗に光ってる、なんだか高そうな車…
このアパートには不釣り合い。
おっぱはいなくて、あれ…?と周りを見ると、目の前の車の窓が開いた。
顎で助手席に座るよう促され、すぐに乗り込む。
車なんて慣れてないし、ましてや助手席なんて初めて乗る。
しかも隣の運転席にはおっぱ。
有り得ない、大人のデート過ぎて心臓が飛び出そう……
おっぱが顔を覗き込んできてやっと我に返る。
大きな手を出されて、半ば強引に私のカバンを取ると後ろの席に投げた。
あ、そっか…
慣れてなさすぎてそんなことも忘れていた。
しっかりとシートベルトを締めると、おっぱにOKと合図した。
緩く呟きながら、ゆっくり発車した。
車は乗り慣れてないけど、なんかおっぱの運転は上手な気がする。
横目でチラッと確認すると、真剣な顔して運転する横顔が見えた。
その姿がかっこよすぎて何度も見ちゃう。
そう言って笑うおっぱの顔を見れるだけで、私の幸せメーターがぐんと上がった。
そのまま車でひたすら走ること1時間。
ここまで言って、以前怒られたことを思い出した。
得意げな視線を送ると生意気なやつ、と言って笑う。
車を停めて2人で店探しなんかして、本当にカップルみたい。
口コミの高いラーメン屋さんで昼ごはんを食べた後、高速に乗って大分遠くまできた。
高速を降りてまたしばらく走ると落ち着きのある土地に入る。
知らない街におっぱといること自体が不思議だ。
ふと光を感じて窓の外を見ると綺麗な海が広がっていた。
その言葉を聞いて、そうか…普通は珍しくないのかと考え直した。
景色を見ながら私が呟くとおっぱが一瞬こちらを見たのがわかった。
車が少ない道でおっぱが急にスピードを緩める。
様子を伺いながら運転する姿を不思議に思っていると、突然車が止まった。
シートベルトを外して降りるように言うおっぱ。
言われるままに車を降りて2人で砂浜に足を入れる。
デート用の靴は手に持って、歩きにくい砂の上を裸足で歩いた。
小さな貝殻を避けるように足を出すと少しバランスを崩す。
差し出された左手をしっかりと掴むと、そのぬくもりに胸が苦しいくらい締め付けられた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。