おっぱの体を思い切り揺すると、やっともそもそと動き出す。
私の方を迷惑そうに見るこの人は、昨日甘い言葉を呟いた人と同一人物とは到底思えない。
おっぱの耳元でそう言うと、やっと起き上がったおっぱが眉間に皺を寄せて私を睨む。
今日は全然こわくないもんね。
昨日あんなこと言ってもらえたから、当分冷たくされても全然大丈夫!!
…多分。
出かける準備をしながら何度か聞くけどやっぱり教えてくれない。
女の子には服とか靴とか色々都合ってもんがあるんだけど…?
終いには、ちょっと出てくるとか言って家を出てしまった。
"ちゃんと支度しとけよ?"なんて。
…言われなくても分かってますっ。
お泊まりなんだからきっとどこか遠出でもするのかな?
ソアに選んでもらった服を並べて考え込む。
デートだから可愛くしたいけど、たくさん歩くならカジュアルな服装にしたいところ。
あぁ、やっぱりそれだけでも聞いとくんだった。
悩みに悩んで、結局デート用に買った服に着替えた。
おっぱは、どんな格好が好きなんだろう…?
ちょっと考えただけでも頬が熱くなった。
着ない服を引き出しにしまおうとすると、奥の方に例の袋が見えた。
派手で可愛い、あの袋…
晴れて彼女持ちじゃないことを知ったけど、いつもの様子からして、今夜おっぱとどうこうあるとは思えない。
…思えないけど、なんだか頭の奥の方でソアとソジュンの
"ワンチャンあるよ"
がやけにこだましている。
必死に頭の中をかき消していると、スマホの通知がきた。
急いで開くといつもの短文。
と打つとすぐに既読がついて、
と急かされた。
まずいまずい。
一瞬だけ悩んでから、私は手に持っていたその袋を急いでカバンの奥に突っ込んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。