おっぱの視線の先を見ると、充電中のスマホが見えた。
それを手に取り、立て膝のまま畳の上を移動する。
手が届きそうな距離まで行くと、おっぱにスマホを差し出した。
何故か伸ばした手首を掴まれて引っ張られると、自然におっぱの方に倒れ込む。
近くに顔があることにびっくりして咄嗟に離れる。
また無駄にドキドキさせるんだ、この人は。
おっぱに掴まれたまま身体を離したから、浴衣が少し引っ張られた。
図星ですと顔に書いてあるんだろうなと自分でも思うくらい、見事に挙動不審になった。
緊張してるのがバレてたとは言え、せめてその理由までは…と神様に祈るけど、聞き入れられそうにもない。
おっぱの目線を追うと、見事に見えてる私のブラ紐。
さっき袖を引っ張られた時に浴衣がズレたみたい。
…これだから浴衣着慣れないやつは!!!
自分で自分に怒りながら急いで襟を直すけど、多分もう無意味だ。
いつも通りニヤついているおっぱの顔が普段以上に憎たらしい。
私が考えてることなんてきっと全部お見通しで、わかった上で言ってるんだろうな…
ほんと、悔しい。
足掻けば足掻くほど、何故か子供っぽくなってしまう私。
悪魔みたいな笑顔で私を追い詰めるおっぱに、なんか反撃してやりたい。
いつもの私ならきっと、
「そんなことありませんっ!!」
とか言って、また笑われて終わりだから。
今日はおっぱの想定外を狙っていきたいの。
今この微笑みに怖気付いてたら、この先なんにもできないぞ!!
自分に言い聞かせながら、ごくんと息を呑んだ。
じっとおっぱの目を見つめて出方を伺う。
さぁ、私の渾身の一撃におっぱはどう対応する?
見せるって…どういうこと?
後ろに手をついたまま首を傾げ余裕そうに言うおっぱは、さっきよりも確実に悪魔感が増していた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。