え…?
兄…?
いやいや、私お兄ちゃんいないんですけど。
この人は何ですぐバレる嘘を……
それとも何?
ドラマや映画みたいに生き別れの兄がいたとかそんなん?
まさかね。
そこまで言うと、私を見てハッとした顔をする自称"兄"。
綺麗な顔をしたその人に肩を抱かれて微笑まれると、免疫のない私はすぐに赤面した。
だってなんだか、さっきからいいにおいで…
この香りにやられてるのかな?
いやいや、私にはおっぱという心に決めた人が……
じゃなくて!!
今、この人なんて言った…?
"グガ"
その名前を聞いて初めてピンときた。
この人が…
この人があの綺麗なお姉さんを奥さんに持つ…!!
例のお兄さんですか!?
全然似てないな…まぁでもそれは良しとして。
そのお兄さんが私に一体何の用だろう。
呆気に取られる私をよそに、おっぱのお兄さんは巧みな話術であっという間に店長と奥さんを安心させた。
サクサクと話を進められて私はバイトを上がり、お兄さんが待つ店の外へと出て行く。
そこにはピカピカの黒い車に乗ったお兄さんが窓から顔を出して待っていた。
確かにそれもある。
口だけで兄弟と言われても嘘かもしれないし。
でもそれよりも引っかかるのは、おっぱがあまり"あわない"と言っていたご家族に会うのは少しこわい。
さっきまでよりも少しだけ強い口調になったお兄さんは、なんだか冷静でこわかった。
運転席からスーツを着た男の人が降りてきて、後部座席のドアを開ける。
無言で乗れ、の圧力がすごい。
そういう問題じゃないんだけど、、
スマホを取り出そうとすると、お兄さんが車から降りてきた。
驚いて少し後退りする私。
一人でクスクス笑う姿に私との温度差を感じる。
その後わずかに寂しそうな目をした気がした。
再び近付いてくる顔。
キス…までの距離ではないけどすごく近くてドキドキした。
あ、この香り……
"あわない"理由か。
おっぱのこと、もっと知れる…?
私は自然と、
そう答えていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。