第25話

怒り
906
2021/03/05 10:00
店に入ってきたのは、昨日見かけた姿のままのおっぱ。

…朝帰りならぬ夜帰りですか。

見慣れない高級そうなコートが、この店に合わないなんて思うのは失礼だろうか。

まだ心の整理がついてない私とは反対に、何故かすごく機嫌が良さそうな笑顔で入ってくる。
Jk
ご無沙汰してます
奥さん
最近来ないから、どうしたのかと思ってたわぁ
Jk
それが、食事には困らなくなって…
そう言って意味ありげに私に目線を送ってくる。

…なに、それ
奥さん
あら、そうなの?
そういえば、今日はちょうどあなたちゃんいるわねぇ〜
you
…え?
奥さんの言った意味がいまいち分からず困惑する。
奥さん
ふふ、巡査さんたら、あなたちゃんのこと気にかけてたんだよ。
you
一体、いつの話だろう?
Jk
そのことなんですけど実はーー
おっぱが、父に許可を得た上で私と一緒に住んでいることを話し始めた。

この前まで目立つのは良くないとか言ってたくせに、こんな簡単に話していいんだろうか?

それとも、私との関係なんて心配するに事足らない程度のもの?
店長
おや!じゃぁあなたちゃんが好きな人って…
you
て、店長…!!
このタイミングで言われるなんて、ついてない。

おっぱには確かに私の気持ちはバレてる。
それは重々承知だけど、こんな幸せそうな笑顔の人にわざわざもう一度実感して欲しくない。
奥さん
アンタ!もう少し考えなっ…!
店長
えぇっ、すまん…
私1人だけ気まずすぎて、レジ閉めの作業を進めて無言で片付けた。

すると、おっぱが楽しそうなまま口を開く。
Jk
ダメじゃないですよ、店長。
こいつが俺にベタ惚れなのとっくに知ってますから笑
you
っ…、、
なん、なの。

私がどんな思いでいると…

自分は彼女と楽しく過ごしてきてご機嫌で、その上私をバカにするわけ?

あまりにも酷い、、

私の好きな人って、こんな人だっけ?

もう気まずいのは通り越して怒りが込み上げてきた。

誰が悪いわけでもない。
おっぱは悪いことしてない、
彼女だって悪くない、
私だってただ片想いしてるだけ。

それなのに今はなんだか当たり散らしたい気分。

それでも人に迷惑はかけられないし、感情を殺すのは私の得意技。
ずっと空気みたいに生きてきたんだから。
店長
あなたちゃん、お迎えも来たことだし、そろそろ時間だよ。お疲れ様!
you
お疲れ様です。
店長と奥さんに頭を下げて、敢えておっぱには目もくれずにバックヤードに入る。

エプロンを脱いでタイムカードを押したら、カバンをひっつかんで裏口から出た。

後からおっぱが追いかけてくる。
Jk
おい、待てって
早歩きで進むけどすぐに追いつかれる。

涙なんか出ちゃって、ありきたりなドラマのワンシーンみたいで笑えてくる。

カバンを持つ手を引っ張られたら、この後の展開はなんだろう?

涙を拭われる?
抱きしめられる?
感動的な瞬間?

そんなことあるわけないよね。
Jk
あなた、
you
Jk
お前何怒ってんの?
私に、かわいいヒロインみたいなことはできない。

おっぱの方は見ずに手を振り払った。

足を緩めずに家までの道を歩く。

こんな嫌なことがあっても帰る家は一緒だなんて、どんな拷問?

歩みを止めない私に諦めて、無言で並んで歩くおっぱ。

…なんか言ってよ。
せめてなんか言い訳してくれたらいいのに。
ごめん、の一言でもいいのに。

部屋に入って2人だけの空間になるとすぐ、さっきより強く手首を掴まれた。

持っていたカバンを無理やり奪われて床に投げられる。
Jk
ねぇ、無視?
you
今おっぱの顔見たくないっ…
至近距離で見つめられると私が悪者みたいじゃん…

目を逸らすと頬を掴まれ無理やり視線を合わせられた。

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