第45話

不審人物
850
2021/03/30 10:00
今日はお客さんが割と少なかったように思う。

片付け始めながら常連のおじさんが惣菜を選んでいると、もう一人お客さんが来店した。

なんだかビシッとキメた人…
you
いらっしゃいませ。
店長
あ…
奥さん
あら…
you
…?
店長も奥さんも知り合い?
2人が顔を見合わせている。

そのお客さんはゆっくりとお店の中に入ってきて、ニコニコしながらお惣菜を見ていた。

常連のおじさんの会計が終わり、少しだけ奥さんと話してから外に出ていく。

店に他のお客さんがいなくなったのを確認すると、ニコニコ笑顔のその人が私に近付いてきた。


「こんばんは、あなたちゃん」

「やっと会えたね?」
you
えっ…、、
私はその知らない人に驚いて、どうしたらいいかわからず奥さんの方を見て助けを求めた。
奥さん
やっとって…もしかして、あなたちゃん知らない人?
you
えっと…ハイ。。
失礼だったかな、私どこかで会ってたんだろうか?

お父さんの知り合い…?

にしては若すぎるか。

年齢はむしろおっぱとの方が近そう。

店長
失礼ですが…以前もいらっしゃいましたよね?
「はい、何度か!あなたちゃんいつもいないから困ったよ〜」

不審に思う私たちとは反対に、すごく楽しそうに笑うその人は不思議な雰囲気を纏っていた。

全然覚えがないのに、何度か店に来て"やっと会えた"なんて正直こわすぎる。

一体この人はなんなんだろう、、
店長
この方、何度かあなたちゃんのことを聞いてきて…名前も知ってたから知り合いかと思ってたんだけども。。
店長が申し訳なさそうにこちらを見る。

あ、前に店長が言ってた私のことを聞いてくる人がいるって…この人のことだったのかな。

お盆を持ったまま固まっている私の前まで来ると、その人は突然肩を掴んできた。

「あ〜かわいいっ♡」

満面の笑みで言ってから、そのまま引き寄せられてギュッとハグをされる。

「会いたかった〜!」

ふわっといいにおいが香ってきて安心してしまいそう。
いやいや騙されるなっ、、
you
ちょっ…!?
細いラインなのに意外にも力が強くてびくともしない。
奥さん
ちょっとお客さん!!
うちの子に何してんのっ
近くにいたおばさんがすぐ駆け寄ってきて私たちを引き剥がした。
店長も厨房から慌てて出てくる。
店長
あんたっ…一体なんなんだ?
いつも優しくて穏やかな店長が珍しく大きな声で言った。

するとその人は一瞬驚いた顔をして私を見てから、またふわっと柔らかい笑顔になる。

「あぁ、申し遅れました。」

隣にいる私の肩を抱き寄せて、自信満々に言い切った。










「僕はこの子の、兄なんです」

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