水の届かない浜辺に2人並んで座る。
この季節だからか、砂浜には見える範囲でも2,3人しかいない。
しばらく海を見つめながらこの感動に浸っていた。
座る時におっぱから離れた手が風に当たって少しだけ冷たい。
おっぱの方を見ると、真っ直ぐに海を見つめていた。
なんとなく、私も同じように視線を水平線に戻した。
おっぱがゆっくりと言葉を紡いでいく。
私は一言も聞き逃さないように、必死に耳を傾けた。
おっぱの言うことがわからなくて、海から目を離してその表情を伺う。
おっぱの気持ちが言葉に乗って、痛いくらい胸に刺さってくる。
でもそれは悲しいとか苦しいとかの感情じゃなくて、その正反対のもの。
やっとこちらを見て、照れたように笑うおっぱ。
その笑顔だけで、私の中で色んなものが込み上げてくる。
あの日私の手を取ってくれて、どれだけ救われたことか。
私がどれだけ感謝しているか…
おっぱにちゃんと伝わってる?
私は、ちゃんと伝えられてる?
鼻の奥がツーンとして、勝手に涙が溢れてくる。
もう自分では止められなかった。
私の知らない話がどんどん出てくる。
おっぱがどれだけのことをしてくれたのか計り知れないけど、それが全部今の私の幸せに繋がっていることは事実。
この時にはもう私の肩は嗚咽で揺れていた。
おっぱと時間を共有するようになってから、私は確実に涙もろくなってる。
前に一度聞いた、おっぱの家族。
"あわない"人たちのことかな…?
あ…一昨日…
お兄さんの奥さんと歩いてるところを、私とソアが見た日だ。
もうぐしゃぐしゃの顔で鼻を啜りながら、居ても立ってもいられなくなって、私はおっぱに抱きついた。
おっぱが優しく頭を撫でてくれる。
うわーんと声を上げて泣いたのは、このなんでも受け止めてくれる海とおっぱの広い胸があるからだと思う。
じゃなきゃ、こんな子供みたいなこと…しないもん。
落ち着いてくると、おっぱがまた口を開いた。
バイト先まで機嫌良く私を迎えに来てくれたのは、それだったんだ.…
今更ながら申し訳なくて、この酷い顔をあげられないまま小さくつぶやいた。
おっぱの声のトーンが普段通りに戻ると、やっぱり意地悪なセリフが降ってくる。
ばっと顔を上げると、
と言って笑われる。
2人でニヤッとしてから、私たちはようやく車に戻った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。