第22話

喧嘩 (1) ウンビ
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2021/12/22 13:10
ウンビ
ウンビ
毎回毎回、これで何回目?!もう我慢なんない。二度と帰ってこなくていいから!
あなた
っ......それなら、二度と帰りませんよ。誰が帰るかこんな家。
ウンビ
ウンビ
なっ...ちょっと!
あなた
二度と帰りませんから




頭に上った血液が沸騰するような感覚に身を任せて、その家を後にする。




冬の夜というのは静かなもので、閑散とした住宅街を早足で歩く。




ただ、頭にはついさっきの彼女の言葉が残っていて。




しばらく歩けば、私の頭には後悔と怒りとが葛藤して、その場に立ち竦んで。








...どうしてこうなった?




























いつの間にか尋ねていたのはとある友人。




誕生日が同じで、最初に入社した事務所も同じで、出身も同じ。




奇跡的な共通点を持つ超人気新人アイドルの宿舎へ転がり込んで数分。




私の目の前の人間は私の話を聞いてなかなか気難しい顔をしている。




ユジン
ユジン
ん〜...それは...どちらが悪いとも言えないよねぇ...
あなた
ていうか、仕方なくない?代表が頭下げてきたら断れるわけないじゃん
あなた
しかもこっちからしたら結構でかい仕事な訳だし、グローバルだよ?
ユジン
ユジン
うん、うん...でもウンビオンニの言い分も分かるよ
あなた
こっちだってこんなに仕事詰めたくて詰めてる訳じゃないじゃん。
あなた
睡眠時間削ってまでやりたくないし、まともな食事も取れてないんだからさ
ウォニョン
ウォニョン
おんにぃ...ちょっと声おっきいですよ...笑
レイ
レイ
ウンビさんも寂しかったんじゃないですか?
あなた
寂しい...?寂しかったらあんな強気に帰ってくるななんて言わないでしょ
ガウル
ガウル
でも、最近全然話せてなかったんでしょ?
あなた
そりゃ...引越しもありましたし、私は私で次から次へと仕事があったので
あなた
出来る限りカトクはしてましたし、電話もしてましたけど
イソ
イソ
ちょっと見せてください!
あなた
うん...?
リズ
リズ
...こりゃあ...塩ですね...
ウォニョン
ウォニョン
あなたのニックネームオンニは昔っから塩だから笑 プラメも塩で有名だよ笑
ガウル
ガウル
これは不安になっても仕方ないんじゃない?
あなた
だって仕方なくないですか?私だって出来るだけ頑張って返してましたけど、ただでさえ時間ないんだから移動中は睡眠に当てたいんです
ユジン
ユジン
ん〜...とりあえず、ここには泊められないからさ、ミンジュオンニとかの家突ったら?
あなた
...そうする。大変ご迷惑おかけしました
イソ
イソ
あっ、オンニ!
あなた
ん?
イソ
イソ
えと...さ、サインだけ...
あなた
え...今更?10回くらい会ってるよ?笑
イソ
イソ
そうなんですけど、貰ってなかったなって思って!
あなた
...ま、いいけど笑 .........はい、じゃあ、頑張ってね笑
イソ
イソ
ありがとうございます!あなたのニックネームオンニも仲直り頑張ってください!
あなた
...出来るかな




可愛い可愛いIVEのマンネから励ましの言葉を頂いて、その宿舎の敷居から出る。




...塩、って言われてもな...普通に返信してるだけだしな



























ウンビside___








....やっちゃった......









あなたが忙しいのなんて、私が誰よりもわかってるはずだった。




来年上半期にはソロデビューも控えてるし、来年放送のドラマの撮影もあったから。




なんなら雑誌の撮影もあるから、並大抵の忙しさじゃないことくらい、あなたの彼女の私が一番わかってたはずだったのに。




あなたの...メッセージが、塩なことも分かってたのに。




トークルームを見返せば、時折感じる塩の中に埋もれた甘く優しい言葉。




当時の私...ついさっきまでの私は、そんなことも分からずにあなたに酷いことを言って。




解散して、家も離れ離れになって。それでもあなたが少しでも一緒にいたいからとわざわざ私と同棲してくれていたのに。








事務所からも遠い、私の家にわざわざ住んでくれてたのに。








あんなに眠そうな声でも、私が着信をかければワンコールで出てくれてたのに。








ちゃんと、冷たい文面でも、好きって、大好きって何度も伝えてくれてたのに。








私...オンニ、失格だ......








即座に襲いかかる大きすぎる程の後悔。




私を飲み込んでしまうほどの後悔と、隣にいたはずの彼女の体温がなくなってしまった喪失感。




それらから逃げ出すように着信をかけたのは、一番恋愛に疎そうで、一番詳しい子。




へウォン
へウォン
もしもし?
ウンビ
ウンビ
...今から、ちょっと出れる?
へウォン
へウォン
...なんか、元気ないですね。いいですよ
ウンビ
ウンビ
ありかと...いつものカフェね
へウォン
へウォン
了解です




どこか、あなたと似たようなへウォンの声が落ち着いて。




気だるい体を起こして、コートを羽織って家を出る。




当然...あなたがくれた、指輪を填めて。































へウォン
へウォン
それはオンニが悪いですね
ウンビ
ウンビ
ぅっ......そ、そんなはっきり言わなくても......
へウォン
へウォン
あなたもあなたですけど、あなたが頼まれたら断れない性格なのは元からですし
へウォン
へウォン
それに、話聞いてた限りじゃちゃんと電話もしてくれてたんですよね?
ウンビ
ウンビ
...うん。なんなら12時までしてくれてた...
へウォン
へウォン
帰ってきたらちゃんとハグもキスもしてくれてたんでしょう?19歳にしちゃ上出来ですよ
へウォン
へウォン
その上だらしなくお腹出してたソファで寝てたオンニをベッドに運んでなんて...
ウンビ
ウンビ
ちょっと待って。なんで知ってるの?!
へウォン
へウォン
あっ............あなたが、定期的に報告?惚気?の連絡入れてくるんです
ウンビ
ウンビ
...あの、あなたが?惚気?
へウォン
へウォン
家帰ったらオンニがオムライス作ってくれてたとか、オンニが一緒にお風呂入ってくれたとか
へウォン
へウォン
物凄い幸せそうでしたし、仕事だらけで辛いとは言ってましたけどオンニのおかげで耐えられるみたいなことも言ってましたよ
ウンビ
ウンビ
な、なにそれ...聞いてない......
へウォン
へウォン
そりゃそんな惚気けてるのをわざわざ恋人に言う人も稀でしょう笑
へウォン
へウォン
......歳上だからって、見栄はらなくてもいいと思いますよ
ウンビ
ウンビ
っ......ありがと、ヘウォナ。私ちょっと行ってくる!
へウォン
へウォン
頑張ってくださいね〜笑
へウォン
へウォン
.........さて...ミンジュに先に連絡しなきゃ














あなたが、いつも真っ先に相談に向かう相手...ユジン。




でもあの子は今宿舎のはず...いや、お構い無しに行きそうだな笑




とりあえず、IVEの宿舎に行こう。きっとそこにいるはず。もし居なくても、メンバーの子達は行き先を知ってるはず。




早く......早く謝らなきゃ、手遅れになる前に






























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