ー教室ーガラッ
そぅ。私と悟は違うんだ。
もしかしたら、悟に置いていかれたというより
私も、その道の最強で在りたかったのかも知れないな。
傑に何が起こる・・・
ー電話ー
私の目に入る人達のイヤな場面の切抜きが
フィルム映画みたいに視えてしまう。
その光景がはっきりと。
視えるうちは家業に専念しなさいと告げられているようで
とてもイヤだった。
どれも良くない事ばかり。
視ようとせずとも。
考えないようにしても。
黙っていても。
それが私の持つ力だった。
傑を、任務に行かせたくない一心だった。
私の予知は的中する。
その事件が起きた日の朝
傑から行ってくるのメールが来た。
返信したメールも、既読にもならない。
お昼休みにも電話した。けど出なかった。
胸騒ぎがして
高専に電話して悟くんを、とも思った。
傑の生気のない冷酷な表情。
むごい情況、凄惨な現場が視えた。
視えないふりをしてきた。
DV男に蹴られたり殴られたりしても
私が見捨てた人達の、浄罪になるなら
それで良かった。
それを止める事も正す事もできないけど
傑を助けたかった。
彼との連絡は途絶えた。
ー3ヶ月後ー
私が下校する頃。
校門前に背の高い男の人がいると騒いでる人がいた。
彼氏が車でお迎えはあっても、身一つで立ってたら
女子校だし、不審がられても無理ない。
背が高い…
もしかしたら・・・まさかね。
帰ろうとする傑の後ろ姿があった。
私があげた、セーターを着て。
3ヶ月が1年にも2年にも、とても長く感じた。
少し痩せた傑がいる。
本当に存在しているのか不安になった。
彼に駆け寄り、腕を掴んだ。
駅に向かって歩く。隣に並んで。
これからの予定を聞かれ、無い事を伝えると
そう言って先を歩く。
最寄駅に降り立ち、どこへ向かっているのか分からない。
けど、ずっと歩いていたい気分だった。
案内されたところは、マンション。
チャイムを押すと、中から子供の声がした。
カチャ
小さな女の子が二人。
ここが、傑の家、なの?
冷酷な顔の傑は、どこにも居ない。
穏やかで温かい。
しかし広いリビングだなぁ…キョロキョロ
壁にミミナナちゃんが描いたのかな?
傑がモデルかな?スーパーロン毛だ。フフッ
絵が貼ってある。
ーキッチンー
紅茶入れたよ。私の前に置く。
彼はシンクに寄りかかり、紅茶を飲みながら
話し始めた。
鋭い目で私を見つめているが
口調が優しい。
黙っていた事を怒っているんじゃない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。