あなたは何も聞いてくる事はなかった。
気を使ってくれているんだろうな。
薄々分かっていたんだろう。
私が早く帰れる日は、
2人でゆっくり寝室でゴロゴロしながら
他愛もない話をしながら眠りに就いた。
いや?イチャイチャしてたかもね。
ー寝室ー
ー・・・
自分の選択した行いに迷いはない。
今もだ。
でも、あなたの前では高専時代に戻っていた。
一緒にいる時は
それで良かったんだ。
時折、悟を思い出した。
高専の時にバカばっかりやって
箱入りの悟に笑わされたよな。
アイツ元気にしてるかな。
きっと、怒ってるんだろうな。
だが、もぅ立場が違う。
悟と再会する時は、きっと…
毎日、幸せを感じていた。
誰かに必要とされ、私の存在意義が満たされる。
何にもいらなかった。そこに傑が居てくれるなら。
ー翌朝ー
その日、私は何でか気分が優れなかった。
なんでだろう…風邪かな?
あなたとミミナナが笑う。普通の朝だった。
何も変わらない朝だったよな。
日中、忙しくて携帯を見る暇がなく
夜になりミミナナから電話が来て初めて携帯を触った。
あなたが帰っていないから、夕食どうしたらいいのかと。
今までこんな事なかったのに…
知らない着信が数件。留守電にメッセージが入ってる。
病院からだった。
ー病室ー カチャ
あなた?
信じられなくて、声にならない。
近寄るけど、目を瞑ったまま。
傷一つついていない、穏やかな顔。
呼吸もしているし、生きている。
反応のないあなたを目の前に
独りぼっちな空気が纏わりつく。
車に轢かれそうになった子供を助けたらしい。
致命傷はないそうだが、意識が戻らない、
ただ、動かないあなたを凝視するだけだったんだ。
涙が自然と頬を伝った。
独り。取り残された気持ちでいた。
それからは、覚えていない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。