第12話

拾弐
398
2022/01/05 11:01
少しずつ歯車が噛み合わなくなる。






ー集会所ー電話中
孔時雨
夏油、キミと同居している女性だが…
大丈夫な相手か?
夏油傑
…大丈夫って。
嫌だなぁ…孔さん。術師ですよ。
孔時雨
そうか。ならば良かった。
今、講演会の準備が動き出しているし
大きな資金となるよ。
キミの名前も大きくする。
身辺はクリーンじゃなきゃな。
色々面倒事があると尻拭いも大変だ。
夏油傑
ハハハハハ、私だって弁えてますから。
宜しく頼みますよ。
孔時雨
そうか。キミは賢いからね。
今度、紹介してくれよ。ご馳走するさ。
講演会が成功したら、報酬たのんだよ?フフッ
また、追って連絡する。じゃ。
ピッ
夏油傑
…紹介するかよ。(舌を出す)
うるせーオヤジだな〜。いちいち。
誰が弾むかよ。2割減らしてやろ〜ハハッ
須田ちゃん、メモっといてね〜
須田真奈美
かしこまりました〜
孔さんはいつも余計な事ばっかりですね。フフッ
…でも夏油様?ご同居の方が術師ならば仲間に
招き入れても良いかと…
まだ人手が足りませんし…
夏油傑
須田ちゃ〜ん。
身内の事はキミには関係ないだろ?
須田真奈美
あ、申し訳ありませんっ…
夏油傑
ま、キレイだから許すけどハハッ
次は無いからね。
あ、そうだ。例の建設工事は進んでるの?
視察に行くから、段取っておいてね〜
須田真奈美
承知しました〜ペコッ
(部屋を出る)
夏油傑
フ〜・・・
ボソッ ほっとけよバーカ。
あなたの能力が0になった事は気付いていた。
でも知らないフリをしている。
あなたが思い詰めているような様子があっても。
そんな話を私自身、簡単に割り切れずにいた。
生活の一部になったあなたを
消し去ることなんて考えた事がなかったんだ。

そうだよな。…矛盾してるよな。
分かってんだよ。そんな事。
ミミナナちゃんもこの春中学生になる。
私も就活が始まる。
少しずつ、ゆっくりと環境が変わって行く中
傑の周りにも人が増えていき
一国を築く教祖に変わりつつあった。




ー夕食ー
夏油傑
あなた、ミミナナ?
来年になったら引っ越しすることにしたよ。
今度は一軒家だ。集会所と併設しているから
私も出掛けず仕事ができるよ。
菜々子
え!すごーい!!
じゃ、夏油さんと一緒にいれるの?
夏油傑
あぁ、一緒だよ。美々子もね。
皆一緒だ。
美々子
うん!学校はぁ?
夏油傑
新しい家の近くに中学校もある。
歩いてすぐの所だよ。
菜々子
やった〜!良かったね、美々子ぉ。
美々子
うん!あなたさんも一緒だね〜
あなた

ん。・・・そうだね。フフッ

夏油傑
・・・ー
ー寝室ー
夏油傑
あなた、旅行に行かない?
あなた

…え?旅行?行けるの?
忙しいでしょ?ミミナナちゃんだって
学校あるし。

夏油傑
ハハッ。行けるよ。高専の頃約束しただろ?
ずいぶん遅くなったけど
ミミナナは抜きで、2人でゆっくりしようか。
あなた

ホント?大丈夫?

夏油傑
大丈夫だよ。仕事も私がいなくとも
フォローはあるし、だいぶ落ち着いた。
長らく待たせたね。
あなた

ハハッ嬉しい〜。どこ?どこ?
楽しみ〜!嬉しい〜。

傑と二人の旅行が嬉しかった。
単純な私。
夏油傑
あ、それから
さっきの引っ越しの件。相談なくすまなかっ
たね。大学から少し遠くなる。
送り迎えも車を出すよ。
あなた

あ、…そう。でも
通学は大丈夫。電車で行けるよ?

夏油傑
いや、そうして欲しいんだ。
あなた

…ん。分かった。

あなたの自由を取り上げたくなかったが
私の立場上、
非術師と長い時間一緒に居て欲しくなかった。



……………………………………………………………
傑と二人の旅行。
最後になるかもしれないと言う気持ちで
打ち明ける事にした。
その先は分からないけど。

行き先は傑の提案で2泊3日で沖縄になった。






ーある日ー

夏油傑
フフッ、おめかしして、出掛けるの?
買い物?
あなた

ううん。友達と食事なんだ〜。フフッ久しぶり。
夕食は作ってあるし…
せっかく傑が早く帰ってきたのに、ごめんね。

夏油傑
そっか。うーん…
じゃ、風呂を沸かしておくよ。
帰る頃、連絡ちょうだい。
帰ったら直ぐに入ってくれよ?
あなた

?なんで?
汚いみたいに言わないでよー。

夏油傑
…相手は非術師だろ?
夏油傑
家に持ち込みたくないんだよ。
あなた

・・・え?

非術師嫌いが、エスカレートする。
胸が痛む。
傑を嫌いなわけじゃないのに、否定したくなる。
それは、私がただの猿だからそう思うのか
それとも、変わりつつある傑に
ついて行けなくなってしまったからなのか。
夏油傑
理解して欲しい。
あなた

…ん。分かった。

傑と一緒にいる以上は仕方のないことだけど
苦しい。
好きなのに、苦しい。
一緒にいたいのに、嫌いになりそうで…
怖い。

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