いつマンションを出ようか。
傑の立場上
早い方が良いだろうと荷造りを始めた。
大学は卒業できるが、就職はせず
1度実家に戻り、家業を手伝ってみる事にした。
ー寝室ー
沖縄から帰って来てからというもの
ミミナナの前では今まで通りだが
あなたとの接触は会話以外、禁止になってしまった。
最終的に、腕枕は許可してくれたね。
ただキミは知らないだろうが
眠っているとき、無意識に私に抱きついて来ていたし、
私も、オデコにキスはさせて頂いてたよ。ハハッ
なんとも馬鹿げているが
子供っぽい行動が少し微笑ましくもあった。
あなたのことだ
予告なく、出て行くつもりだろう…想定は付く。
ただ
いつなのか分からない不安があった。
ーお風呂上がりのドライヤーー
一緒には行かないことを話した。
ビックリしていたけど、理解してくれた。
ハハハハハ
ミミナナちゃん、夏油さんを助けてあげてね。
意外とさみしんぼだからさ。
ー庭ー
春を迎え、私達は引っ越した。
と同時に私は
仕事以外の行動、食事、生活全般において
非術師との接触をやめた。
世の中をシャットアウトしても
意外と何とかなるもんだな。
広い庭を設けた。プチ農園をミミナナが作り始める。
今日はプチトマトを植えるそうだ。
できやしない事を知ってて、ミミナナに話したな。
引っ越してから、伝えてもいいよと
あなたに言われたらしい。
ぽっかり空いた穴をミミナナが埋めてくれてる。
時折、あなたの話題になると
口元が緩んでしまうが
後悔は、もうないよ。
あの日、あなたが家を出た日
最後に見送れて良かった。。
今日。家を出ようと決めていた。
傑は会議で帰りが遅いって言ってたし
ミミナナちゃんも、学校帰りに傑の所に行くって
言ってたから、私の好きなタイミングで
ここを出れる。
明日からここに帰らないと思うと、不思議な感じだ。
夕食は作っておいた。
いつか撮った
傑とミミナナちゃんが手を繋いで並んで歩く
バックショットを写真にして飾った。
今見ても絵になる。ミミナナちゃん、小さかったなぁ。
もう1つは、イタズラがてら置き土産を。と。フフフ
最後に、傑に会いたかったけど
振り切れるか自信がないから連絡もしないでおこう。
沖縄から帰って10日が経つ、
ハグもキスもしていない。触れてしまったら
離れられなくなりそうだから、極力離れてた。
傑は不満そうだったけどね。ごめんね。
靴を履き出ようとした時
カチャ 外から鍵が開いた。
え?
見つかった!て、顔が…笑えた
パタン
ドアが閉まり、あなたとの距離が近くなる。
普通の感じで良かったよ。
沖縄で一生分泣いたもんな?
・・・・・ー
いつもと変わらない
穏やかな傑の雰囲気や表情がズルい。
出た言葉は小さかった。
真っ直ぐ私を見つめてる
涙で滲んで傑の顔がよく見えなかったよ。
私は彼に抱きしめられていた。
あなたが私を見上げる。
キミからキスしてくるとは思ってなかったよ。
中々離れられなかったな。
パタン
ちょっと出掛けてくる。そんな別れだった。
ー夕食ー
ミミナナと私で鍋が違ったから不思議だったが…
辛いの苦手なの知ってて、ワザとだろ?
どんな置き土産だよ。ハハ
二人とも、好きなまま目の前から消えていく。
いつか撮った沢山の写真を見返す。
あれだけ泣いたのに、いくらでも泣ける。
体中の水分が全部出てしまうのかも知れない。
声を出して、疲れるまで。眠りから覚めたら
また泣いた。
呪いになるから、言葉にはしなかったけど
傑?どうせなら、私を忘れないでね。
なーんてね。ウソだよ。
どうか、元気でいてね。
ありがとう。さようなら。
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空を見上げる。いい天気だなぁ…
あなた、元気にしてるかい?
キミがいてくれたら、それでいい
なんて言った時があったが、
ずいぶん辛い思いをさせてしまったね。
すまなかったよ。
心の穴はミミナナが埋めてくれてる。二人とも元気だよ。
キミを忘れるほど、忙しくもしているんだ。
これからは私の創る世界に没頭できそうだよ。
キミも私も、直に忘れるさ。
さぁ、猿の時代に幕を下ろし
呪術師の楽園を築こうじゃないか。
大きく深呼吸をし、会場へ向かった。
ーENDー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。