第14話

最終話
452
2022/01/10 01:48
いつマンションを出ようか。
傑の立場上
早い方が良いだろうと荷造りを始めた。

大学は卒業できるが、就職はせず
1度実家に戻り、家業を手伝ってみる事にした。




ー寝室ー
夏油傑
アパート借りるの?
あなた

ん?教えなーいフフフ

夏油傑
それくらい教えてくれてもいいんじゃない?
あなた

だーめ。

沖縄から帰って来てからというもの
ミミナナの前では今まで通りだが
あなたとの接触は会話以外、禁止になってしまった。

最終的に、腕枕は許可してくれたね。
ただキミは知らないだろうが
眠っているとき、無意識に私に抱きついて来ていたし、
私も、オデコにキスはさせて頂いてたよ。ハハッ
なんとも馬鹿げているが
子供っぽい行動が少し微笑ましくもあった。

あなたのことだ
予告なく、出て行くつもりだろう…想定は付く。
ただ
いつなのか分からない不安があった。
ーお風呂上がりのドライヤーー


あなた

菜々子ちゃん、髪伸びたね〜
サラサラ (乾かしてあげてる)

菜々子
うん。伸ばすのっ。
美々子
あなたみたいにクルクル巻くんだよね〜
菜々子
うん。
あなた

そのままでもカワイイよ?

菜々子
だってね、夏油さんが
大きくなったらあなたさんみたいにしたら?
って言ったから。
美々子
ハハハ。美々子も伸ばしてるよ。
あなた

美々子ちゃんも?・・・ふ、ハハハ。
ミミナナちゃんは夏油さんの事が
大好きなんだね〜
私みたいにしなくても、
夏油さんはミミナナちゃんの事、
大切に思ってるよ。

菜々子
夏油さんがパパで、
あなたさんがママだったらなぁ…
あなた

…え?

美々子
新しいお家になったら、あなたも夏油さんの
お手伝いする?
あなた

うーん…私はね…

一緒には行かないことを話した。
ビックリしていたけど、理解してくれた。
菜々子
夏油さんと結婚しないのぉ?
あなた

フフッ。そぅだなぁ…
100年後に迎えに来てくれたらねフフッ

美々子
100年〜?!できるわけ無いじゃん!
あなた

いや、夏油さんならできるかもよ?

ハハハハハ

ミミナナちゃん、夏油さんを助けてあげてね。
意外とさみしんぼだからさ。
ー庭ー




春を迎え、私達は引っ越した。
と同時に私は
仕事以外の行動、食事、生活全般において
非術師との接触をやめた。
世の中をシャットアウトしても
意外と何とかなるもんだな。

広い庭を設けた。プチ農園をミミナナが作り始める。
今日はプチトマトを植えるそうだ。
夏油傑
フハハハハハ、そーか。100年後か。
できやしない事を知ってて、ミミナナに話したな。

引っ越してから、伝えてもいいよと
あなたに言われたらしい。
菜々子
夏油さま、絶対迎えに行こーね!
あなたさん、ぜーったい待ってるよ。
美々子、ココに苗置いて〜
美々子
ここ? ペンペンペンペン←土を叩く
でも、もしかしたら
あなたさん、10年後と間違ったのかも。
だって100年後なんて生きる訳ないし。ハハッ
菜々子
そーだよね。そーかも!10年後だよ!
あ、そこじゃないよ、夏油様っ。
夏油傑
・・・どうかな。 ペンペンペンペン←土を叩く
ホントに100年後かも知れないな。
あなたなら本気で言いそうだもんなー。
ペンペンペン
え?ここじゃないの?どこ?
美々子
…18.19.20.21.22。
ミミナナが、22歳になったらだ!
10年後!
夏油傑
そーか。ミミナナは大人だな。
あなた、驚くぞハハハ
だが、100年後だから112歳だよ。
生きてるか?
菜々子
キャハハハ112歳〜! 夏油様はいくつ?
そこじゃないー!そこペンペンしないでー!!
夏油傑
うーん。32歳だね。フフッ オヤジだな…ハハハ
100年後は122歳。 
いや、現実的に迎えにいけないよ。ハハッ
え?どこペンペンしたらいいの?
美々子
ハハハおじさんになっちゃったから
分かんないの〜?
ここに苗入れてください〜
夏油傑
ハイハイ 美々子、やめてくれよ〜
私はね、まだおじさんじゃないんだよ。ハハハ
ぽっかり空いた穴をミミナナが埋めてくれてる。
時折、あなたの話題になると
口元が緩んでしまうが


後悔は、もうないよ。


あの日、あなたが家を出た日
最後に見送れて良かった。。
今日。家を出ようと決めていた。

傑は会議で帰りが遅いって言ってたし
ミミナナちゃんも、学校帰りに傑の所に行くって
言ってたから、私の好きなタイミングで
ここを出れる。
明日からここに帰らないと思うと、不思議な感じだ。
あなた

よしっ。

夕食は作っておいた。

いつか撮った
傑とミミナナちゃんが手を繋いで並んで歩く
バックショットを写真にして飾った。
今見ても絵になる。ミミナナちゃん、小さかったなぁ。
もう1つは、イタズラがてら置き土産を。と。フフフ

最後に、傑に会いたかったけど
振り切れるか自信がないから連絡もしないでおこう。

沖縄から帰って10日が経つ、
ハグもキスもしていない。触れてしまったら
離れられなくなりそうだから、極力離れてた。
傑は不満そうだったけどね。ごめんね。



靴を履き出ようとした時



カチャ 外から鍵が開いた。


え?
夏油傑
あなた
あなた

傑…

見つかった!て、顔が…笑えた


パタン



ドアが閉まり、あなたとの距離が近くなる。
夏油傑
ククク。どんな顔してんだよ?ハハッ
あなた

え?…ハハハハハ…ビックリした。

夏油傑
行くの?
あなた

…ん。

夏油傑
…そっか。
あなた

ヘヘヘあ、夕食作っておいたよ。

夏油傑
…あぁ。すまないね。
ん? クンクン カレー?
あなた

そ。みんなが大好きなカレー。
傑越したカレーフフフ

夏油傑
言うね〜。ハハッ
ま、ミミナナが言うなら仕方ないか。
確かに、美味いよ。フフフ
普通の感じで良かったよ。
沖縄で一生分泣いたもんな?



・・・・・ー
いつもと変わらない
穏やかな傑の雰囲気や表情がズルい。
あなた

フフッ…(うつむく)
_お世話に、…なりました。

出た言葉は小さかった。
夏油傑
(あなたのアゴを上にあげる) ん?
あなた

ウルウル(涙が溢れる)

真っ直ぐ私を見つめてる
涙で滲んで傑の顔がよく見えなかったよ。

私は彼に抱きしめられていた。
夏油傑
ハハッ おま、どんだけ涙出んだよ。
ー・・・
すまないね。そんな顔されたら
こうせずにはいられなかった。フフフ
あなた

ポロ フフッ。
やめてよね〜、わざとでしょ?

夏油傑
いや、…本能だね。
あなたが私を見上げる。
キミからキスしてくるとは思ってなかったよ。
中々離れられなかったな。
あなた

(唇を離す)…フフフ///

夏油傑
フフッ
こんなことしたらさ、情が移るんじゃない?
あなた

…ううん。移らない。

夏油傑
ハハハ。そーか。
・・・気が強いな。
あなた

そ。もともとねっ。…嫌いでしょ?

夏油傑
ハハハ…いや。気の強い子は好きだよ。  …だが
…ある意味、苦手になるかもな。…フフフ
あなた

フフフ。そ?
・・・じゃ、行くね。

夏油傑
・・・ん。
あなた

カチャ(ドアを開ける)

夏油傑
あなた
あなた

ん?

夏油傑
・・・またな。
あなた

ニコッ ハハ

パタン

ちょっと出掛けてくる。そんな別れだった。



ー夕食ー
菜々子
あなたさんのカレー美味しいね〜 パク
美々子
うんうん、パク
夏油さんのもさ、美味しいよね〜
夏油傑
ハハハそうかい?ありがとう。
でも、あなたのカレーが1番だね。
パク  ん?・・・辛っ。
菜々子
えー?辛くないよ〜
美々子
ハハハお水飲んでください〜
ミミナナと私で鍋が違ったから不思議だったが…
辛いの苦手なの知ってて、ワザとだろ?
どんな置き土産だよ。ハハ
二人とも、好きなまま目の前から消えていく。

いつか撮った沢山の写真を見返す。
あれだけ泣いたのに、いくらでも泣ける。
体中の水分が全部出てしまうのかも知れない。
声を出して、疲れるまで。眠りから覚めたら
また泣いた。


呪いになるから、言葉にはしなかったけど

傑?どうせなら、私を忘れないでね。

あなた

グスッグスッ・・・ハハッ グスッ

なーんてね。ウソだよ。

どうか、元気でいてね。
ありがとう。さようなら。



………………………………………………………………
夏油傑
須田ちゃーん、集会何時から?
須田真奈美
13時からですー。
夏油傑
あ、そ。
ちょっと外出てくる。
空を見上げる。いい天気だなぁ…

あなた、元気にしてるかい?

キミがいてくれたら、それでいい
なんて言った時があったが、
ずいぶん辛い思いをさせてしまったね。
すまなかったよ。

心の穴はミミナナが埋めてくれてる。二人とも元気だよ。
キミを忘れるほど、忙しくもしているんだ。
これからは私の創る世界に没頭できそうだよ。


キミも私も、直に忘れるさ。

夏油傑
自分にできることを精一杯やるだけだな。フフッ
さぁ、猿の時代に幕を下ろし 
呪術師の楽園を築こうじゃないか。


大きく深呼吸をし、会場へ向かった。



ーENDー

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