時間が空けばあなたの様子を見に行った。
数日後、あなたの意識が戻る。
声になっていない第一声を聞いたとき、
泣きそうになった。
自分の事は何も知る事ができない。
事故に合っても、生きてる。
見ず知らずの人の最期は知れるのに
私は…そっか。
私は…持つ力を活かさなければいけないのかな。
その為に生かされているのかな…
傑が前に
特殊な力は選ばれた者のみが
世の為に貢献するものと思ってる
て言った事を思い出した。
私は何で自分の能力を否定してきたんだろう。
兄に嫉妬していたのかな
私より能力が低い兄を大事にしていた両親に
愛されたかっただけなのかな…
間もなく退院が決まり、傑と一緒にマンションへ戻った。
リビングに行くと、部屋にかわいい飾付け
ミミナナちゃんか書いてくれた、
似顔絵付きの、おめでとうのカードがあった。
暖かい空気で、喜びが溢れた。
日増しにあなたは元気になり、学校にも行き始める。
私はと言えば
術師だけの楽園を作る為に必死だった。
仲間を集め、資金を作る。
組織を大きくする為に、無我夢中だったんだ。
時折あなたと出掛けたり、充実した毎日だった。
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少し前に来客があった。
話の前後は分からないけど、術師だけの世界を作る為に
海外からも刺客を招き入れる話を進めているみたい。
とにかく、仕事の話になると別人のようで、
傑に近寄る事ができなかった。
でも、彼に打ち明けなければならない…
私は事故により、持つ能力を失ったようだ。
いつか、気付かれる。
私は術師ではなかったが
彼側の人間ではあった。
でも今は
非術師と言われるそっち側の人間だ。
非術師を猿と呼ぶ彼に、どう話しだしたら良いのだろう…
ー夜ーリビング
ハハハ
皆で笑い合う団欒の時間。
あなたはいつも元気にしていたから
それが普通と思っていた。
あなたの心の奥までは、分かってやれなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。