第10話

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2022/01/03 05:58
時間が空けばあなたの様子を見に行った。
数日後、あなたの意識が戻る。

あなた

・・・(目を開ける)
傑?・・・いつからいたの?

声になっていない第一声を聞いたとき、
泣きそうになった。
夏油傑
…フフッ。ずいぶん前からだよ。
早く起きないかなーって。顔見てた。
あなた

フフフ。視線、感じたよ?ビーム強すぎ。フフッ
…ミミナナちゃんは?大丈夫?

夏油傑
大丈夫だよ。気にしなくていい。
具合はどう?
あなた

ん。大丈夫。

夏油傑
ゆっくり休んでくれ。
キミは、頑張りすぎだよ。フフ
あなた

…うん、(傑の頬を手で包む)フフフ

夏油傑
ん?
あなた

ウルッ・・・ー
傑が、いる。(涙が、流れる)
今、ここに…いる。

夏油傑
フフ、ずっと居るよ。(手を握る)
自分の事は何も知る事ができない。
事故に合っても、生きてる。
見ず知らずの人の最期は知れるのに
私は…そっか。
私は…持つ力を活かさなければいけないのかな。
その為に生かされているのかな…

傑が前に
特殊な力は選ばれた者のみが
世の為に貢献するものと思ってる
て言った事を思い出した。

私は何で自分の能力を否定してきたんだろう。
兄に嫉妬していたのかな
私より能力が低い兄を大事にしていた両親に
愛されたかっただけなのかな…
間もなく退院が決まり、傑と一緒にマンションへ戻った。
夏油傑
ミミナナが楽しみにしてるよ。
あなた

ホントに?

リビングに行くと、部屋にかわいい飾付け
ミミナナちゃんか書いてくれた、
似顔絵付きの、おめでとうのカードがあった。
菜々子
あなたさ〜んっ。
美々子
タタタタッ ハグっ。
あなた

ミミナナちゃん、ありがとう〜。

夏油傑
フフフ。じゃ、夕食の準備しようか。
暖かい空気で、喜びが溢れた。
日増しにあなたは元気になり、学校にも行き始める。

私はと言えば
術師だけの楽園を作る為に必死だった。
仲間を集め、資金を作る。
組織を大きくする為に、無我夢中だったんだ。

時折あなたと出掛けたり、充実した毎日だった。
夏油傑
あなた?
あなた

ハッ ん?どーしたの?

夏油傑
いや。何か考え事?珍しくボンヤリしてる。
疲れてる?ココ出たら帰ろうか。
あなた

ううん。大丈夫〜ハハハ…
久々のデートだもん。次どこ行く〜?

夏油傑
ムリしなくていいんだよ。
あなた

ありがとう。でも大丈夫〜

………………………………………………………………………


少し前に来客があった。
話の前後は分からないけど、術師だけの世界を作る為に
海外からも刺客を招き入れる話を進めているみたい。
とにかく、仕事の話になると別人のようで、
傑に近寄る事ができなかった。


夏油傑
あなた、すまんが、お茶出してもらえる?
あなた

あ、はい。

でも、彼に打ち明けなければならない…

私は事故により、持つ能力を失ったようだ。

いつか、気付かれる。
私は術師ではなかったが
彼側の人間ではあった。

でも今は
非術師と言われるそっち側の人間だ。

非術師を猿と呼ぶ彼に、どう話しだしたら良いのだろう…






ー夜ーリビング
夏油傑
ミミナナはしっかり呪術をモノにしてるね。
習得すんの早いな〜エライエライ
美々子
うん!
夏油さんと一緒にお仕事できる?
菜々子
嬉し〜っ!菜々子上手になった?
夏油傑
ああ、上手だよ。美々子もね。
でもね、大きくなったら術師じゃなくても
自分の好きな事をしたらいいからね。
その時は私に相談してくれよ。
あなた

ミミナナちゃんは何になりたいの?

菜々子
えー。
夏油さんと一緒に
お仕事したいよねー美々子っ。
美々子
うん!
夏油さんがミミナナを助けてくれたから
今度は、夏油さんを守ってあげるよー
夏油傑
…あなた、聞いた?
私、泣いちゃいそうだよ。ハハハ
嬉しいね。ありがとう。
あなた

ハハハ大丈夫?
ミミナナちゃん、夏油さん感激してるよ〜

夏油傑
ハハハ…いや、ホント泣ける。
ハハハ

皆で笑い合う団欒の時間。
あなたはいつも元気にしていたから
それが普通と思っていた。
あなたの心の奥までは、分かってやれなかった。

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