俺は、少しずつだが分かって来ていた。
(くっ、またか)
自分が弱気になると負の力が強くなり傷口から身体の中へ闇が広がって行くみたいだって事が。
どんなに思わないようにしていても、それは敏感に感じ取り襲って来る。
その感覚は回を重ねるごとに強くなり、まるで焼かれてしまうんじゃないかってくらいでさ。
歯を食いしばり独り苦しみに耐えていた、その時
それは起きたんだ。
(あれは、なん…だ?)
玉が、光るというより淡く滲んでいるみたいに揺らぎ思わず手に取り見つめると部屋の片隅で丸くなっている薮の姿が見え、その傍らにはトッツーも。
それに塚ちゃん、佐久間や阿部・宮近・如恵留までいてさ。
(そっ…か、お前)
(えっ、宮田も!?つうか、あいつ佐久間と繋がって
いたんだ)
(くっ…俺も‥お前らと…話が‥したい)
俺は、満身の力を振り絞り負の力を追い払うかの
如くに叫ぶ。
.
すると、それに反応したかのように玉は微かな光りを放ち。
そのことに気づいた彼奴らも口々に俺の名を呼び。
俺は、なんとか言葉を返そうとするんだけど奴らがまた邪魔をしてよ。
けど薮の悲痛な声が俺に打ち破る力を与えてくれ。
とたん向こうへ俺の声が届いたことを知ると、奴らは波が引いてくかのようにサァーッと何処かへ行ってしまい。
俺は久々にみんなと話すことができ、しかし驚いたのはいつの間にかニカが宮田と合流していたこと。
あいつの情報は、まったく耳に届いていなかった
から。
それにしても…
その声は、疲れた心と身体を癒し俺にパワーを与えてくれた。
(ほんと皆ありがとな、頑張るから俺)
そしてみんなの想いを受け、また前へと進んでいく決心を固めたんだ。
(えっ、千賀とタマが永瀬と遭遇した!?)
それに永瀬廉の記憶を取り戻すには、いや彼奴が
この世界でやって行くにはメンバーからの援護が
必要だ絶対。
俺自身も皆との絆さえあれば独りでも乗り越えて行けると、そうこのときは思っていた。
(そんなに甘くはないのにな)
日が経たずして俺は、嫌ってほどそれを思い知らされる事になる。
(なぁ、なんでそんなふうになってしまったんだよ?あいつらが知ったらどんなにショックを受けるか、横尾さん目を醒ませしてくれ俺はお前と戦いたくはない)
それは、予想だにしなかった衝撃の再会だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。