玉梓との戦いの前に俺と藤ヶ谷はやらなければならないことがあった、それは彼奴らにこの世界で関わった者との縁を自らの手で断ち切らせること。つまり自分の手で相手を殺す意味でもある、でなければ元の世界には戻れない。
永瀬は既にゝ大法師を手に掛けた、だから大丈夫だ千賀はやる気でいるしニカの相手も同じ2人でやれば何とかクリアできるだろう、タマも横尾さんの話では決心したと聞く。
藤ヶ谷は自分の相手が分かっているみたいだし横尾さんは俺の勘が正しければ父親の一角、残るは宮田だ。
が、それを探るため何気に聞いてみたらやけに歯切れが悪く。
(怪しい、ジロッ)
(話し逸らしてるし)
だからついでに、こっちで会ってからいろいろあって聞きそびれてしまっていたことも聞いてみる事にする。
すると、ギクッとした顔をし。
(言われてみれば)
だが、ちょっとカマを掛けたらすぐにボロを出し。
(ははぁーん、さては俺に知られたくない事をニカに口止めしたな)
そう突っ込むと宮田は渋々と話し始め、しかしそれを聞き愕然としてしまう。
(マジで!?こいつの相手は尼さんと子供)
(そうじゃなく、おまえ斬れるか?)
(目の前に闇と化したそいつらが現れたとき)
(その悲しみから立ち上がるのに、どれだけの時間が掛かった?なのに今度は自分が、けどそれでも俺はやらせなければならない。
お前を元の世界へ戻す為、だから許してくれだなんて言わない憎んでくれて構わない。ただ強く生きて行って欲しい、それだけ)
歯に噛みながら笑う宮田を俺は、複雑な思いで見つめていた。
宮田の瞳は希望に満ちていた、それが益々俺の心を締めつける。
「だから乗り切ってくれ、お前なら大丈夫だと信じている」そんな想いを込め笑い掛ける、その笑顔を失くさないで欲しいと。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!