それは、見るに耐えられない光景だった。
宮っちによって太輔たちから引き離された俺はただ見ている事しかできず、そんな自分が情けなく地面に拳を叩きつけ悔しさをぶつける。
(太輔がどれだけミツのことを想って来たか苦しさに耐え、それでも傍にいたのは愛するミツに辛い思いをさせたくなかったから)
聞かなくても長年、近くで見て来たからこそ分かる。
きっと本当のことが言えず邪険にしていたに違い
ない、あの時だって化け猫に近づけないようにし
ていたのは追い込みたくなかったから「そうでしょ太輔」
「じゃどうすれば良かったんだ?」と、そのとき。
(この声はダテ!?)
(何処から?)
しかし、トッツー達からその方法を聞いた俺らは
愕然としてしまう。
(なら、やるしかない)
(ふっ、宮田)
(きっと恐怖に打ち勝ってくれるに違いない、そう
信じている)
トッツー達の話によれば仁の玉の光を刀に吸収させるとミツを包み込んでいる闇が見えるようになるらしい、そしてそれを斬れば苦しみから解放されるというんだ。
(さっきはまだ永瀬が玉を手に入れていなかった
から、ミツを追い込んでしまったというわけか)
(しかし薮は、なんでそんな事を知っているんだろう?いったい何処にいる電話をしてきたってことは彼奴らと一緒じゃないって事だよね)
俺は気にはなりながらも、宮田と太輔たちのもとへ急ぐ。
俺達がそこへ行くと、3人とも驚いた顔をし。
俺は薮からの伝言をそのまま3人に伝えた、すると見る見る永瀬の顔から血の気が引いていき。
俺は、少し離れた場所で寄り添い必死で闇と戦っているミツと太輔を指差し言った。
その姿に、もう誰も言葉を発することが出来ず。
俺らはミツと太輔がいる場所へと向かう、ただ健永だけは何故だか周りを気にしてることに気づく。
そして、その視線の先にいたのは…
(誰もが、みな身体を張って生きていた時代だから
こそ貴方は俺達に何かを感じて欲しかったのかも
しれないですね)
「ちゃんと受け止め未来を見つめ歩いて行くことを」それが自分らがしなければならない事だと、
考えさせられるような出来事がこのあと起きる。
しかしそれは、ますます俺達の結束が固まる結果ともなったんだ。
(その為にあんな事をしたというのなら凄い人だゝ大法師、あなたの瞳が見つめる未来には何が映っていたのか?)
それを聞いてみたかったと後になって思う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。