目を覚ましたら俺は、藤ヶ谷の腕の中にいた。
(そっか、お前ずっとそうしててくれてたのか)
前を見るとタマと永瀬の顔が見え「戻って来れた」そう思ったのもつかの間、俺の中であいつ玉梓の声がしたんだ。
しかし、身体は自分の意思とは関係なく勝手に動き出す。
けど、俺は仁王立ちとなり抜いた刃を廉へと向けている。
(くそぉーっ、クッ)
(ふざけやがって!ハァハァハァ)
俺を必死で抑え込む藤ヶ谷。
(くっ、このままだと俺はこいつらを冗談じゃない)
「頼むから言うことを聞いてくれ」タマが無我夢中で廉を俺から引き離す。
その悲痛な声が心に痛い。
「お前にも危害を加えるかもしれないんだ」が、
こいつはそれを無視し。
あげく人の顔を見て微笑みやがって「俺を信じてるって言うの?一緒に戦うとでも、このバカやろう」
(やっべ廉に刺された傷が)
「俺は化けもんなんかになりたくねんだキスマイの
北山宏光のままで死にたいんだよ分かるだろ?お前なら」藤ヶ谷の瞳をジッと見つめ。
(俺はまだ死ぬわけにはいかないから、これからやりたいことが沢山あるんだ何よりも俺お前らと別れたくないし、横尾さん宮田・ニカに千賀・タマ、そして藤ヶ谷、俺らは皆1つの家族だKis-My-Ft2という)
(ほざいていろ、怨霊)
「はっ」そのとき薮の声が聞こえ「やっぱり気の
せいじゃなかったんだな」
(孝の玉?)
(薮お前、なんでそんな事を?)
訳が分からないまま言われた通りにすると。
(俺の?そうか親父の息子の)
(そのお前が、なんの用で?だいいち守護霊ならどうして今まで傍にいなかった)
(薮と?)
(永瀬のをか)
(失敗したら?)
(なるほど)
(心配するな俺は絶対に助かってみせるから)
(あぁ、目をつぶれば皆の顔が見える)
そして、顔を見上げれば。
相棒、藤ヶ谷太輔の笑顔があった。
(そうこの顔だ、お前の笑顔を見ていると心が落ち
着く)
俺は後ろにいる藤ヶ谷に、もたれ掛かるように自分の身を預けそのときを待った廉が俺の前に来るのを。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!