朝、目覚ましが高らかに鳴り響く。
(うおっち、ビックリしたぁ)
(さては、あいつ隙をみて悪戯したな)
大爆笑するニカの顔が、脳裏に浮かんだ。
(ばーか、クスッ)
一人暮らしをしていると、独り言が増える。
朝ご飯に、納豆は欠かせない。
(何てったってオレ納豆同好会の一員ですから、うわ懐かしい~うふふ)
過去の映像を頭の中で振り返り、思わず顔がニヤけてしまう。
ピロリロリン―
(んっ?LINEだ誰からだろ)
テーブルの上に置いてあったスマホに手を伸ばす。
(はっ?藤ヶ谷!?なんで俺に)
思いもかけない相手に一瞬身体が固まってしまい、数分後。
(おまえ誰に送っているつもり?横尾さん)
そう返したら…
(どうしたキング、朝からおふざけか?)
(はあっ?おい俺、今モーニングタイム中なの邪魔しないで)
カタンとスマホをテーブルの上へ戻し、再びメシを食い始める。
暫くし、ふと目を落とすと。
ブルブルブル―
(起きてましたよ、朝から可笑しなことがあったから)
(ともあれ仕事へ行かなくちゃ)
(きっとあれは何かの間違い、もしくは気まぐれ)
そう思うことにし出掛ける準備に取り掛かる、30分後マネージャーが到着し。
ブロロロ、走り出したバンの中には。
(えっ、藤ヶ谷!?)
奥の席の窓際に座って耳にイヤホンを付け外を眺めている姿に。
(嘘だろ?じゃ、あれは)
挨拶をすればチラッとこっちを見て「おう」とでもいうように軽く手を上げ。
(それだけ?)
無愛想な返しに「やっぱり間違いだったんだ」そう思う。
無言が続く車内、ただエンジン音だけが聞こえ暫くすると横尾さんの家へ到着し。
ニコやかに乗り込んで来た、その声に藤ヶ谷が反応し。
俺のときとは大違い、満面の笑顔で。
(なんだわ、それ?)
藤ヶ谷がLINEで言って来たのと同じ言葉を言う横尾さんに、心の中で突っ込む。
そんな俺らのやり取りを無視するかの如く手招きしている藤ヶ谷、それから2人で並んで座りペチャクチャペチャクチャよく喋る、そんな中ブルブルブル~またもやLINEが。
(今度は…誰?えっ、また藤ヶ谷)
(はっ?ついてねぇし)
慌てて鏡を取り出し見たら、ブルブルブル爆笑しているスタンプが送られて来て。
(あんにゃろーう)
チッと後ろを振り向けば。
何食わぬ顔をし横尾さんと喋っている。
(どういうつもり?)
意味不明のままスタジオへと到着し。
その太輔さんがですねぇ、なんて言えるわけもなく。
溜め息まじりでバンから降りた、後ろで横尾さんがクスクスと笑っているとは知らず。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。