最初は何が起きたのか分からなかった、薄気味悪い顔をした奴が刀を振り上げ俺に向かって来たと同時に。
「ヤバイやられる!」そう思った瞬間、俺は怖くて目をつぶってしまい。
そしたら、ザクッと嫌な音がし開けてみると目の前に肩から血を流し苦痛に顔を歪ませている顔があり。
(えっ!?)
(俺の為に、どうしてそこまで)
そのとき頭の中でネジが回り始めたかの如く次から次へ、いろんな顔が浮かんで来て。
(横尾さん?はっ、ガヤ、千賀、タマ、宮田!)
けど1人たりない、俺が人生の先輩として尊敬している彼奴の姿が。
それは、そいつの名は…
(そうだ宏光)
俺は目の前で苦痛に顔を歪ませているミツに気づく、そしてその後ろには血の滴る村雨丸を持った奴が笑いながら立っていてよ。
沸き上がる憎しみにも似た感情が、俺の中の恐怖をも消し去り。
(よくも、よくも俺の大好きなミツおぉーっ)
キッと睨みつけると。
挑み掛かるように叫んだ、しかし。
(分かっている分かっているけど、こいつだけは絶対に許せない)
止められてもなお衝動は鎮まることを知らず、俺は怒りに震えながら相手を睨みつけた。
だが、そんな俺を無視し網乾とかいう奴はニヤけながら姿を消して後に取り残されたのはなんにも出来なかった情けない自分と息も絶え絶えのミツ。
(ごめん、ごめんな)
半べそ状態の俺にミツはうっすらと笑みを浮かべ、そして。
俺の腕の中へ力なく、しなだれ掛かってしまい。
(そんな嘘だろ?なぁ~俺を独りにすんなって)
俺はその身体を抱きしめ、どうしていいか分からず道端へとうずくまってしまう。
どのくらいそうしていただろう実際はそんなに経っていなかったのかもしれない、けど俺には凄く長く感じたんだ、その声が聞こえるまで。
「ミツ、聞いてるか助かるってよ」俺は意識のないミツに心の中で話し掛ける。
しかし、この法師との出会いが俺達をとんでもない方向へ導くことになろうとは。
この時は、まだ思ってもみないでいたんだ。
彼の名はゝ大法師 安房の国、滝田の城に仕えていた事があると後になって知る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。