(こいつら、いったい何なんだ)
(くっ…)
(ボッ、ボワッ、ボッ、俺は誰に対し火を放っているんだよ)
「ぐはっ、ううっ」「ぎゃあぁーっ」「ぐああっ」
(同じ人間だ、いや…違う化けもんだ、あんなの仲間なんかじゃない)
自分が放った炎が、全てを焼き尽くす。
それはまるで地獄絵図のような光景だった、とつぜん不可思議な軍団が現れイキなり襲って来て次から次へ皆を殺していき。
(こいつら、なんも悪いことしていないのにどうしてこんな目に遭わなきゃならないんだよ)
気がつけば自分だけが取り残され独り焼けただれた土地で茫然と立ちつくし握り締めた拳が掴んでいた物は…
「これは、あの時の」ふと思い出す、可愛い少女の笑顔。
この玉には、そんな愛らしいあの子の気持ちが篭っている。
(なのに…くっ)
俺の腕の中で身体を小刻みに震わせ逝ってしまった、一言も言葉を発することが出来ないまま。
(ゴメン、守ってやれなくて)
悔し涙が頬を伝ってくのを俺は拭おうともぜず泣き崩れた。と、そのとき。
ピカッ!
(なっ、なんなんだ!?これ手の中で光っている)
拳は光を放ち、そっと開けてみると浮かび上がった【忠】という文字。
(えっ?)
驚き見つめていると聞こえて来たのは…
(この…声‥?)
(佐久…間?)
その言葉が忘れていた遠い記憶を甦らせる、
あの日 俺はタマと一緒に秋葉を歩いていた。
・千賀side
(はっ、宮田!)
今、確かに宮田の姿が見えた気がした。けど水面が波打ち消えてしまい…
あげくニカに声を掛けられ説明することが出来ず、言葉を詰まらせてしまう。
(だってそうじゃん誰が信じると思う?水に映っていただなんてさ「バカじゃね」って笑われるに決まっている)
(お前が一番苦しいときに俺は知ってて傍に行かなかったんだから)
(それを知ったら「許せねぇ」って怒鳴るんだろうな、でもなんにも言えない事実そうなんだし)
俺は宮田のことも気に掛かっていた、何かあったに違いない嫌な予感が脳裏をよぎる。
(確かに、そうだけど)
(行っちゃった、怒らせてしまった「冷たい…」か、だよなシンメのお前が独りぼっちでいたときも俺は放っておいたんだもん)
(この人って不思議、話していると気分が落ちつく)
(自分も、あんなふうに人の心に語り掛けられる人間になりたい)
(本当は分かっているくせに)
俺とミツは、互いに顔を見合わせ苦笑いをし。
(こうして見るとミツはすっかり元気になったように見える)
(やっぱりニカが気にし過ぎなんじゃ?)
が、俺は軽く見ていたんだ傷口を見たわけではなかったのもあるけど。
(ニカ、お前は知っていたんだよな尋常じゃないって)
暫くし、ふてくされながら戻って来たニカはミツの意思の強さに負け渋々一緒に行くことを承知する。
そして、出発は明日と決まり。
(待っていろタマ、もうすぐ迎えに行くから)
・北山side
(傷口はだいぶ治ったはずなのに、なんでだろ?時々やつに斬られた部分が熱くなる。
気のせい…だよな?だってあの法師も大丈夫だって言ってたじゃん、なぁニカ?)
が、毎日キズを消毒し手当てをしてくれているニカの表情は暗い。
(お前、どうしてそんな顔をしているんで?言ってみ)
そう思いながらも俺自身、その理由を聞き出せないでいた。
千賀もまた、無理して明るく振る舞っているようにも見え。
(何があったんだ?2人とも俺がこんなんだから言えないでいるのか、もう大丈夫だって)
そう平気だと思っていた、あの苦しみが襲って来るまでは自分の中で何かが動き出したことを俺はまだ気づいていなかったんだ。
それは悪魔だったのかもしれない、誰の心の奥にも潜んでいる闇の心。
俺達3人は傍にいながらもそれぞれが秘密を抱えてる現実に今後、振り回されていく事となる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。