俺は夢を見た、そこはNHKの楽屋へと続く廊下で。
(なんでこんな所にいるんだろう?そうだ!あの日、翔太に呼ばれ俺はNHKホールに来たんだっけ…
だけどあいつ)
(もーう開いた口が塞がらないとはこのことさ、でもせっかく来たんだから)
そこら辺を歩き回っていたら廊下の窓から不思議な光が差し込んでいて、そこに光るトンネルが見えたんだっけ。
で、面白そうだから入ってみたんだよね「ええっ、これってあのときの?なんで今さら」夢の中なのにリアルにそう思う。
が、歩いているうち誰かの声が聞こえ。
とたん目の前にパーッと光りが放ち、あまりの眩しさで思わず瞳を閉じたら身体が勝手に引き込まれて行ってさ「おいどこへ連れて行く気だよ」その動きが止まり眼を開けてみたら。
ぬいがいたんだ…
「えっ」と、今度は違う光景が広がって突然ぬいが現れ何かに追われているのが見える。
慌てて傍へ行こうとするんだけど、身体は思うようには動かず。
(くっそぉ~)
(そん…な‥)
最後に言った言葉…
(嘘だよなこれ?ぬいが殺された闇に、もののけとなった連中に誰か嘘だと言ってくれ!どうして?あいつは何も関係ないじゃん)
ふと、あの網乾が言っていた言葉を思い出す。
(あれはそういう事だったのか、くっ)
叫びながら目を覚ますと驚いた顔をしたニカが傍にいてよ。
「夢だと言ってくれ全て幻だと頼む」けれどニカは、唇をギュッと噛み締め何も言わず。
(おまえ知っていたの?じゃ、あれは本当に起きた事なんだな)
そして俺たち2人は、この後もののけとなったぬいに再会する事となる。
そのときニカが本当に彼女のことが好きだったのを俺は知った、ぬいが昇天したときに見せたその涙を見て。
・二階堂side
千賀の叫び声で目を覚ますと、あいつは泣きながら妹の名前を言っていて「そうか、おまえ夢で見てしまったんだな」
(ゴメンずっと隠していて…けど、どうしても言えなくてさ)
あの日、ミツを捜すため街道を歩いていた俺は怪しい連中とすれ違い、その中にあいつ網乾の姿も見え。
でも、まさか彼女が俺の後を追って来ていただなんて思いもしなかったから。
「えっ」その声で慌てて戻ると既に、あの仔は。
すっげぇ~悔しかった、ミツのときも彼女のときも俺は何もできなかったんだから情けねったらありゃしない。
お前らが行ったあと彼女は本当によくしてくれたっけマジで俺、好きになっていたんだ。
でもミツも言っていたように俺達はこの時代の人間じゃない、いくら想ったって叶う相手じゃないのも分かっていた。
だから自分の気持ち封じ込めるしかなく「ただ幸せになって欲しい」あの仔の笑顔を見るたびに、そう願っていたのに「こんな事ってあるか」
そう、出来なかったんだ俺は。
再び起き上がったとき彼女は微笑みながら俺に短刀を向け斬り掛かって来てよ。
そんなふうになってしまったなんて言えるわけがない莊介の機転で難を逃れ森の中をさ迷い歩いているうちに俺は宮っちと出会ったんだ。
千賀は、俺の話しを黙って聞いていた。
(お前、なにを考えている?まさか自分がそれをやろうだなんて言うんじゃないよな)
(分かった、お前と一緒なら俺も出来そうな気がするし)
「それが、あの仔にしてあげれる唯一のことなら」そう決心し俺達は2人してそのときを待つことにした、それがミツに全てを背負わせてしまう結果になるだなんて思いもせず。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。