第16話

護るべきもの①北山side
462
2019/08/31 03:58
「マジかぁーっ」狭い部屋に響き渡るくらいの声で、俺は叫んだ。

二階堂
女?タマが、ぷっ、くっ、あはははっ


その横で、ニカが笑い転げている。

千賀
なんでも旅芸人の一座と行動を共に
しているらしい
北山
旅芸人…って、あっ
千賀
2人とも会っているはずだよ


鈴の音と共に甦る…あの日、人垣の群れの隙間から垣間見た横顔。

北山
あれタマだったのか
千賀
そういうこと
二階堂
あはっ、アハハッ
北山
おいニカ
二階堂
ん…なに?ハァハァハァ


(こいつ笑い過ぎて息切れしている)

北山
おまえ見ていたんじゃないの?
二階堂
あぁ、あの時はなんだか見覚えがある顔だなとしか思わなかったから
北山
だけど、どうして分かった?
千賀
それ…は


一瞬、表情を曇らせる千賀。

北山
まっ、いい話せるようになったらで
千賀
ごめん
北山
なんで謝る?
千賀
あ、うん


「お前も、いろいろとあったんだろ?」そう、眼で聞くと申し訳なさそうにうなだれた。

北山
ところで話しは変わって千賀、玉なんか持ってない?
千賀
これのこと


ピカッ、ピカッ、ピカッ、途端3つの玉が連動し
浮き出た文字は。

【孝】【義】【悌】

(そうか、こいつのは【悌】なんだ)

千賀
うわっ、すっげ~光ってる!?
北山
知らなかったの
千賀
初めて見た
二階堂
おーい宮近、聞こえるニィ~二だよぉ
千賀
ん?


と、すかさず玉に向かって叫び出すニカに目が点になる千賀。

千賀
大丈夫か?いきなり
北山
今に分かる、ふっ
二階堂
おぉ~い


(しかし、こいつ調子に乗ってハシャギすぎ)

宮近
煩いですよも~何時だと思っているんです
千賀
へっ?なに
二階堂
俺、記憶が戻った
宮近
良かったですね、じゃ眠いんで失礼
します
二階堂
えぇ~もっと何か言ってー
宮近
明日、早いんです勘弁して下さい
北山
宮近そっち今、何時
宮近
夜中の3時ですけど
北山
もしかして寝てた?
宮近
はい、まぁ
北山
悪い起こしてしまって、じゃ報告だけしとく
宮近
なんでしょう?
北山
千賀と合流した
宮近
本当ですか?千賀くん聞こえます
僕の声
千賀
宮近?マジで宮近だ!?すっげぇ~なんで話せるんだろ
宮近
さぁ?俺にも分からないんですけどね


でも、1つだけハッキリしている事がある。

宮近
ただニィ~二のハットを持っていて


俺達は繋がっているんだって、それぞれ今は別々の場所にいても心は離れず。

千賀
ってことは、誰かが俺の私物を持っていたら
北山
千賀も、そいつと話せるのかもしれないな
千賀
ふーん


こうして薮や宮近と話をしてると思えてくる、だからこそ早く他のメンバーを見つけなければと。

俺は改めて感じていた、自分たちが培って来た絆、想いってものを。

それから、宮近との通信を終え暫くすると。
法師
失礼しますよ
千賀
ゝ大さま?
法師
申し訳ない、お話し聞かせてもらいました
北山
ぁ…‥


ゝ大法師が現れ「見せては頂けないでしょうか?その玉を」そう言い。

二階堂
なんで?
北山
別にいいじゃん
二階堂
でもさ
千賀
ニカ、ゝ大さまは信用できる人だよ
法師
ありがとう犬田殿いや千賀殿でしたな
千賀
あ、すみません俺
法師
構いません気にしていませんから


そして、俺達の玉を1つずつ丁寧に見ては頷き。

千賀
これ何なんです?
法師
んっ?
千賀
俺達どうして持っているんだろう
法師
千賀殿は確か
千賀
ぬいの兄貴が熊と闘ったとき手に入れたとか言ってた
二階堂
くっ、熊あぁ~そんなの近くにいるのか!?
千賀
大丈夫だって山奥の森にでも行かなくちゃ出て来ないから
二階堂
良かったぁ、ホッ
北山
ぷぷっ
法師
では、お話しましょう


するとゝ大法師は俺達の顔を1人ずつ見つめ、ゆっくりとした口調で語り始める。

法師
安房の国の領主である里見義実公よしざねこうには2人の姫君がおられました、お二人ともそれはそれは美しく愛らしい姫さま方で


平和を望む義実公は戦を嫌い安房の国は平和に満ちていたんだ。が、ある日。

隣国の山下定包さだかねの横暴な振る舞いに苦しむ村人達が温厚な義実公に助けを求めて来て、見るに堪えない現状に義実公は兵を上げ山下定包を攻め落としたという。

しかし…

法師
定包の悪妻である玉梓は、そんな義実公を恨み呪いの言葉を投げ掛け絶命したのです
北山
待てよ、それって里見八犬伝じゃ
二階堂
あっ、以前に滝沢くんがやってた
北山
この玉、そっか!なんで気づかなかったんだろ
千賀
えっ、なになに?
法師
ですから、それは伏姫さまの物
二階堂
それが本当なら俺達には関係ないじゃん、どうしてこんな所にいるんだよ
北山
ニカ、落ち着け
二階堂
けど
法師
確かに、この時代の御仁ではない皆様方にはなんら関係のないこと
千賀
へっ?
北山
知っていたんだ
法師
あなた方を呼んだのは拙者ですから
北山
なんだって!


再び俺の声が部屋中に響き渡りニカも千賀も言葉が出ず、ただ茫然としていた。

北山
どうしてそんな事をしたんで?俺達はそれでバラバラになってしまったんだぞ、うっ
千賀
ミツ!
北山
で、でぇ…じょぶ‥大きな声を出したら傷が痛んでしまっただけだ
二階堂
無理をすんな
北山
悪い、ふっ
法師
申し訳ない、が他に手は無かったのです肝心の八犬士になる者達が既にこの世の者では無かったため我らは
千賀
ゝ大さま、どういう


それはら驚くべき真相だった。

(だから呼ばれただって?あり得ない、じゃどうしろと言うんだ俺達は戦なんて知らない現代の人間だ)

それを…

法師
迷っている時間などないのです、あなた方がやらなければ明日はない
二階堂
嘘だ、そんなの
法師
闇は徐々に人々の心を蝕んで行く
千賀
そしたらどうなる?
法師
憎しみ合い殺し合い全て、もののけと化す
北山
‥‥っ
法師
あの網乾左母二朗という男も、その内の1人


(人間じゃなかったのか、どうりで)

法師の言う通り迷っている暇なんてなかった、俺らは自分たちの世界を護らなければならない。

その為には他のメンバーと早く合流しないと、まず行き先は。

千賀
馬加大紀の屋敷
二階堂
あぁ
北山
そこにタマがいる


緊迫した空気の中、誰もが同じことを考え先を見つめていた自分たちの居場所を何がなんでも護ろうと。




プリ小説オーディオドラマ