「マジかぁーっ」狭い部屋に響き渡るくらいの声で、俺は叫んだ。
その横で、ニカが笑い転げている。
鈴の音と共に甦る…あの日、人垣の群れの隙間から垣間見た横顔。
(こいつ笑い過ぎて息切れしている)
一瞬、表情を曇らせる千賀。
「お前も、いろいろとあったんだろ?」そう、眼で聞くと申し訳なさそうにうなだれた。
ピカッ、ピカッ、ピカッ、途端3つの玉が連動し
浮き出た文字は。
【孝】【義】【悌】
(そうか、こいつのは【悌】なんだ)
と、すかさず玉に向かって叫び出すニカに目が点になる千賀。
(しかし、こいつ調子に乗ってハシャギすぎ)
でも、1つだけハッキリしている事がある。
俺達は繋がっているんだって、それぞれ今は別々の場所にいても心は離れず。
こうして薮や宮近と話をしてると思えてくる、だからこそ早く他のメンバーを見つけなければと。
俺は改めて感じていた、自分たちが培って来た絆、想いってものを。
それから、宮近との通信を終え暫くすると。
ゝ大法師が現れ「見せては頂けないでしょうか?その玉を」そう言い。
そして、俺達の玉を1つずつ丁寧に見ては頷き。
するとゝ大法師は俺達の顔を1人ずつ見つめ、ゆっくりとした口調で語り始める。
平和を望む義実公は戦を嫌い安房の国は平和に満ちていたんだ。が、ある日。
隣国の山下定包の横暴な振る舞いに苦しむ村人達が温厚な義実公に助けを求めて来て、見るに堪えない現状に義実公は兵を上げ山下定包を攻め落としたという。
しかし…
再び俺の声が部屋中に響き渡りニカも千賀も言葉が出ず、ただ茫然としていた。
それはら驚くべき真相だった。
(だから呼ばれただって?あり得ない、じゃどうしろと言うんだ俺達は戦なんて知らない現代の人間だ)
それを…
(人間じゃなかったのか、どうりで)
法師の言う通り迷っている暇なんてなかった、俺らは自分たちの世界を護らなければならない。
その為には他のメンバーと早く合流しないと、まず行き先は。
緊迫した空気の中、誰もが同じことを考え先を見つめていた自分たちの居場所を何がなんでも護ろうと。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。