俺はまた、こいつと一緒にいる。
(頑固なやつ、ふっ)
が、お互い何も言わなくても俺逹には通じ合うものがあった、だから。
言葉数が少ないのは相手への思いやり、それも分かっている。
(しかし、なんで横尾さんはあんなふうになってしまったんだろう藤ヶ谷は気にはならないのかな?仲が良かったのによ)
歩きながら考えていると…
こいつが、とつぜん話し掛けて来て。
(だったら俺は)
俺らは、その山へ向かうことにし暫く進むと。
(横尾さんだとでも言いたいわけか、藤ヶ谷お前なにを知っている?)
(まっ、いい…どうせお前も自分が記憶喪失でない事を俺が気がついているのを分かっているんだろうし。それでもフリをし続けているのは、あのことを知られたくないからか?俺は全然平気なんだけどな)
お前がまた現れたとき、その意思をしっかりと受け止めた。
「傍にいて護る、藤ヶ谷お前そう思っているんじゃない?」それは何があっても変わらない強い意志、ならちゃんと受け止めてやらないと。
(けど、ただ護られているのは性に合わないんだ俺もお前を護らせてもらう、いいだろ?だから俺のために身を投げ出そうだなんて思うんじゃない顔に出てるわ、そんなことをしたら絶対に許さないからな。あと、ちゃんと着いて来てるか?横尾さん)
俺は、後方にいるだろう影に心の中で呟く「お前の本当の仇を俺らがこれから引きずり出してやる」
その山は静かにそびえ立っているが、漂う雰囲気は奇しい空気をかもし出していた。
「前へ進むこと」それは困難に打ち勝ち何かを得ること、そして何事にも逃げない強さを持つこと。
(掛かって来い、もののけ。てめぇらなんかに俺逹は負けたりはしない、それを今から証明してやる)
俺と藤ヶ谷はそれぞれの想いを胸に秘め、そこへと足を踏み入れて行ったんだ。
・横尾side
あれから化け猫が潜んでいる山を教えてもらった
俺は、そこへと向かっていた。
すると奴をその近くで見かけ…
(あのときの男も一緒かって事は思った通り仲間だったんだな山へ戻るのか?なら隙を見て2人ともやっつけてやる俺は絶対にもののけを許すわけにはいかないんだ、あんな非道なやつら)
後をつけ、しばらく進むと木々が覆い茂った場所へと出て。
(なんだここ?骸骨がいっぱいだ彼奴こんなに人を
喰っていたのか)
「ふぎゃあ~」
(はっ、この鳴き声は)
ガサガサガサ!
(くっそ~いつの間に周りへ、ちゃんと見ていたはずなのにどうして?)
ザザザァ―
(何処だ、どこにいる?)
「ぎゃあぁーっ」
(いた、木の上)
頭上を飛ぶ化け猫に刀を構える。
が、身体の上にのしかかられ絶体絶命に。
その物凄い形相が顔面のすぐ目の前まで迫って来たそのとき、ピューッと1本の矢が何処からともなく飛んで来て化け猫の眼に突き刺さり。
バッ、ガサガサ、ガサッ!その姿は山の中へと消えて行き俺は難を逃れることが出来る。
ガサッ!
そして草むらを踏み締める足音に後ろを振り向いたら、そこには思いも掛けない奴の姿があったんだ。
すくっと弓矢を構える姿は凛々しくキリッとした
表情で俺を見つめ、今でも「この時もし化け猫に
1ヶ所でも傷つけけられていたら」そう思うだけ
でゾッとする俺はミツみたいに耐えられる自信が
ないから。
「感謝している有り難う」それから俺達は同じ道へと進むことができた、少なくとも俺はそう思っていた。2人は違っていたのか?だとしてもミツも大輔も自分にとっては大切な仲間、3人で過ごした日々をけして忘れはしない。
いつまでも、ずっと。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。