第111話

記憶の破片⑤薮side
236
2019/12/15 04:51
その頃、俺は宮田と玉森が引き込まれた場所が分からず困惑していた。

あの2人だけは見当もつかない、何故なら2人ともNHKには来ていなかったから確か秋葉で塚ちゃんが見かけたって言ってたけど、それも少クラの収録前に…って事はそれからこっちへ向かったとも考えられる。

と、そのとき信乃が。

信乃
薮殿、外へ出てみては如何かな
だね、俺もそう考えていた


横尾さんも藤ヶ谷と外にいた、だからこの2人も。

確か遊歩道の近くに小さな公園みたいな所があったっけ


よくイベントとかをやっている…

逆へ行けば原宿にも出れる


そう、この周辺はいろんな場所へと繋がっていた。
もし玉森と宮田が近くまで来ていたとすれば、必ず形跡が残っているはずと。

よし、まずは原宿方面へ行ってみよう


俺達はNHKを出て暫く歩いてみたんだ、すると。

信乃
ここら辺で何やら気配を感じる


信乃の言葉に辺りを見渡すと突然ピカッと、ライトを当てたような光の柱が現れ。

(えっ)

それは俺達が向かおうとしている方向とは真逆に、渋谷方面へと動き後をつけてみるとピタッと止まって「NHKの真上?どういう事」とたん!

宮田
うっわあぁ~


どこからともなく宮田の叫び声が「どこ?どこに
いる」キョロキョロと、再び辺りを見渡したけれ
ど姿は見えず次の瞬間。

佐久間
宮田く~ん


(なんで佐久間の声が?)

信乃
薮殿、あそこを!


思わず反射的に見上げた上空、そこにも光のトンネルが俺達の目の前で宮田の身体が通り抜けて行く。

(えぇ~っ、空から!?あり得ないって)

玉森
宮田、宮田あぁーっ


その向こうから玉森が、まるで飛ばされて行く宮田を追いかけているかの如く走って来て。

無茶すぎる
信乃
仕方ないのだ
信乃
信乃
我ら八犬士はそれぞれ力の度合いが
違う、それに


(引き込めるのは自分の身代わりとなる者だけ、そうか)

信乃
道節は、ああするしか道がなかったのであろう


信乃たちには信乃たちの事情がある彼らだって辛かったはず、だから責めてはいけない悪いのは怨霊、玉梓なんだから。

と、今度はNHKの前まで来た玉森の頭上に光の柱が現れ。

玉森
なに次は俺ってわけ?ふっ、いいよ
連れて行けば


(玉森…)

玉森
宮田のいない世界にいたって何の意味もない、それとも


「あいつの所へ行けるのかな」そう寂しそうな笑みを浮かべ玉森は引き込まれて行った。

(うん、会えて良かったね)

あと宏光と藤ヶ谷だけか
信乃
さすれば次へ行くとしよう薮殿


コクンと頷き1歩前へと足を踏み出す。

(あの日、横尾さんがNHKの楽屋口で引き込まれたのなら藤ヶ谷は必ず傍にいたはずだ戻って来るのを待っていたとすれば)

そうか公園か


そこに、きっと藤ヶ谷がいる。




プリ小説オーディオドラマ