永瀬が仁の玉をかざして暫くすると、意識のない
北山に変化が生じる。
初めは眉が少し動き、それから徐々に手を持ち上げ始め。
思わず俺は叫んだ。
永瀬も掲げていない方の手を差し延べ、すると綺麗な指がまるで何かを求めるかの如く小刻みに震え。
それを聞き「北山くん、こっちです」永瀬が言えば微かに唇が動き。
俺も、黙っていられず声を掛けた。
その目元は、僅かだが振動し。
と、ゆっくり瞳が開き。
離れた場所の一点を見つめ「んっ?何処を見ているんだ」そう思っていると。
(そこか、はぁ…)
ギュッと抱きついてくタマを嬉しそうに腕の中へ
包み込みニコッと微笑む北山、それを見てちょっ
とふてくされぎみの永瀬。
俺達は、ただ嬉しくて笑い合った眼に涙を浮かべ「戻って来てくれた」それだけでいいと思いつつ。
けど、それは甘い考えだとすぐさま思い知らされる事となる。
突然、フラフラっと立ち上がった北山は。
そう言うと仁王立ちとなり刀を抜き、その刃は永瀬へと向けられ。
眼光は鋭く、まるで悪役をやっていた時のこいつ
そのものだったから俺達は愕然としてしまう。
(玉梓だって!?)
このとき闇に支配されていた北山の身体を使って
怨霊、玉梓は後輩の永瀬をその手にかけさせる事
により再び闇の中へ堕とそうと企んでいた。
(冗談じゃない、させるか!そんなこと。こいつは
北山は俺の大事なシンメお前になんか渡しはしない)
(嫌だ絶対に離れない)
(心配するな、そんな事にはならないから俺はお前を信じている、だから一緒に戦ってやるよ)
そう笑い掛けると北山は、ふっと苦笑いをする
「このバカ」そう言っているかの如くに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。