第88話

闇との戦い⑪藤ヶ谷side
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2019/11/17 03:36
永瀬が仁の玉をかざして暫くすると、意識のない
北山に変化が生じる。

玉森
ミツ


初めは眉が少し動き、それから徐々に手を持ち上げ始め。

藤ヶ谷
そうだ戻って来い!


思わず俺は叫んだ。

永瀬
北山くん頑張れ


永瀬も掲げていない方の手を差し延べ、すると綺麗な指がまるで何かを求めるかの如く小刻みに震え。

藤ヶ谷
もしかすると見えているのかも
しれない
永瀬
えっ
玉森
何が?
藤ヶ谷
仁の玉を通し永瀬の姿が
玉森
ええっ
永瀬
北山くんが俺のことを?
藤ヶ谷
間違いない


それを聞き「北山くん、こっちです」永瀬が言えば微かに唇が動き。

藤ヶ谷
北山、永瀬の所まで辿り着け!そこに俺達がいる


俺も、黙っていられず声を掛けた。

北山
…っ‥じ…ぁ‥
藤ヶ谷
なんだ?おい、もっとハッキリと言え
北山
ふ…じ‥っ…
玉森
ガヤ、ガヤの名前を呼んでいる
永瀬
本当だ!?
藤ヶ谷
北山!


その目元は、僅かだが振動し。

玉森
ほら目を開けてミツ
藤ヶ谷
俺を見ろ
永瀬
北山くん!
北山
くっ
藤ヶ谷
あと少し大丈夫だ俺達は、お前の
傍にいる
玉森
独りじゃない、みんな一緒さ
永瀬
俺、北山くんのこと大好きですから


と、ゆっくり瞳が開き。

玉森
はっ、開いた
藤ヶ谷
くっ、このやろう心配かけやがって
永瀬
やったぁ~


離れた場所の一点を見つめ「んっ?何処を見ているんだ」そう思っていると。

北山
うおーっ、タマちゃん可愛い
永瀬
えっ


(そこか、はぁ…)

北山
デヘヘヘッ
永瀬
あの…なんで玉森くんなんですか?
北山
知らないの?タマはね俺にとっては
藤ヶ谷
可愛い可愛い弟だったんだろ何年前の話しだよったく
北山
ガハハハッ
玉森
ミツ、ミツが戻って来た
北山
タマ、ふっ


ギュッと抱きついてくタマを嬉しそうに腕の中へ
包み込みニコッと微笑む北山、それを見てちょっ
とふてくされぎみの永瀬。

永瀬
どうして目の前にいる俺じゃなく
北山
だってタマが、こんな格好をしているだなんて思ってもみなかったんだもん
永瀬
そりゃ、確かに可愛いですけどね
北山
あぁ~お前、妬きもち焼いているんだ、んふふっ、まだまだ子供だな
永瀬
違いますって、もう
玉森
あははっ、で?どっちに
永瀬
えっ、あ…
藤ヶ谷
ぷぷぷっ


俺達は、ただ嬉しくて笑い合った眼に涙を浮かべ「戻って来てくれた」それだけでいいと思いつつ。

けど、それは甘い考えだとすぐさま思い知らされる事となる。

北山
くっ、なんだ?お前
玉森
ミツ?
藤ヶ谷
どうした
北山
はっ?バカ言ってるんじゃね
永瀬
誰と喋っているんですか?
北山
俺は、お前の言いなりになんかなら
ねんだよ
藤ヶ谷
北山!


突然、フラフラっと立ち上がった北山は。

藤ヶ谷
おっ、おい
玉森
動いちゃダメだって怪我をしているんだから
北山
うっ…せ‥わ
永瀬
どうしちゃったんですか?北山くん
北山
俺の周りでゴチャゴチャ言うな


そう言うと仁王立ちとなり刀を抜き、その刃は永瀬へと向けられ。

永瀬
き…た‥やま…くん


眼光は鋭く、まるで悪役をやっていた時のこいつ
そのものだったから俺達は愕然としてしまう。

永瀬
そう…ですよ‥ね…俺が北山くんを刺したんだ
藤ヶ谷
永瀬、お前なにを言っているんだよ
永瀬
いいですよ斬っても
藤ヶ谷
バカ、北山も刀を下ろせ
北山
や…め‥ろ…クッ
玉森
ミツ?
北山
こい…つに‥手を…出すな‥ハァハァハァ
藤ヶ谷
えっ
北山
…この‥クソッ…玉梓あぁーっ


(玉梓だって!?)

このとき闇に支配されていた北山の身体を使って
怨霊、玉梓は後輩の永瀬をその手にかけさせる事
により再び闇の中へ堕とそうと企んでいた。

(冗談じゃない、させるか!そんなこと。こいつは
北山は俺の大事なシンメお前になんか渡しはしない)

北山
ふ…じ‥がや…俺から‥離れろ…クッ


(嫌だ絶対に離れない)

北山
俺…は‥お前…を‥傷つけたく…
ねんだ‥頼む


(心配するな、そんな事にはならないから俺はお前を信じている、だから一緒に戦ってやるよ)

そう笑い掛けると北山は、ふっと苦笑いをする
「このバカ」そう言っているかの如くに。




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