ザクッ!
その鈍い音に、俺は我が耳を疑った。
ザクッ、ザクッ!
(えっ)
が、取り囲んでいた子供達からは悲鳴が上がり徐々にその輪が崩れて行くと。
その中央には刀を構え辛そうに顔を歪めている、
みやの姿があり「なっ、なんて事を!?」叫ぶ尼。
次から次へ昇天していく尼と子供たち、ザクッ!
ザクッ!
そして最後に少女の「もののけ」が残った時、その動きがピタッと止まる。
確かに今までの奴らとは違う、それは俺も感じていた。
みやは、ジーッと見つめて来る少女の可愛らしい瞳に耐えきれず嗚咽を口から漏らす。
北山の言葉に、その表情が苦痛に歪む。
そう言い、瞳からは大粒の涙が溢れ出し。
宮田が泣いている滅多に泣かない、みやが眼にいっぱい涙を溜め歯を食い縛り「あいつが泣くだなんで」その姿に俺は声を詰まらせ。
北山が、落ち着いた声で言葉を発した。
キョトンとした顔で見つめている少女に、みやは
意を決したように近づき。
ギュッと、その小さな身体を力いっぱい抱きしめ「ザクッ!」その子に見えないよう後ろから頸動脈を斬った。
それは、みやのせめてもの優しさだったのかもしれない。
少女の亡骸を抱きしめたまま泣き叫ぶ、みやに俺達は言葉をかけてやる事ができず。
ピカッ!
そこに光りのトンネルが現れ宮田は全てを受け止めたかのように何も言わず中へと引き込まれて行く。
俺達もまた、それを見届けると黙って先へと進んだ残るは俺の相手である成氏と玉梓。
先に戻った彼奴らの為にも絶対なし遂げてみせると、そう心に誓い。
・宮田side
キタミツの叫ぶ声が聞こえた瞬間、ザクッと俺の手は動いていたタマの顔を思い出し。
そして悲鳴を上げながら消えていく子供達「ゴメンごめんな本当に」心の中で謝りながら次から次へと斬っていく。
しかし最後に残ったあの子は、まるで天使のように佇んでいて「おかしいじゃん、なんで?もののけのはずなのに」
(ふっ、そういうこと)
(手の混んだことをするよ、ったく)
全てが済んだとき俺の心には虚しさだけが沸き上がりピカッと、その光りに包まれても何も反応する事が出来なかった正直こんな世界もういたくはないと思ったし。
最後に聞いた道節の言葉、そのまま引き戻されて
行き。
タマが俺を呼ぶ声で、ハッと我に返る。
「あぁ、戻って来てしまったんだな」皆の声を聞きながら。
(あの2人なら、まだ残っているよ)
(今は何も聞かないで千ちゃん)
「なんとか…ね」すると放心状態になっている俺にタマが。
(不安げな表情、そうだ北やんじゃん)
そう、喰って掛かったとき。
口々にメンバーが叫ぶ中、俺は初めてその存在に
気づく。
ピカッ!
そんな中、ガヤさんが姿を現し。
その叫びは悔しさに満ち心の中へ切なく響き渡る、俺達は何をしたらいい?独り取り残されたキスマイの最年長キタミツの為に。
皆がみんな同じ想いでそこを見つめていた、月の道にある向こうの世界への入り口を。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。