俺達は村を出てひたすら歩き続け、ようやく勝田の城の少し手前のところまで来ていた。
暗闇の森の中、それぞれが木にもたれ掛かり疲れた身体を休める。
(俺は途中からだったけど他のみんなは殆どが来た道を戻っているんだから大変だよね)
するとガサッ、ガサガサ、何やら音がし獣らしき気配を感じ。
「なんだろう?」暗がりの中、よーく眼を凝らして見れば2つの眼光が「あれは、もしかして化け猫?なら今度こそ」そう思って立ち上がった、その時。
後ろで、ミツの声がして。
(ありがとう2人とも)
俺達は3人して他の連中を起こさないよう足を忍ばせ化け猫らしき影の後を追った。
「ギャアアァァ~」
思った通り現れた姿には、太輔が放った弓矢の傷痕が生々しく眼に残っていて。
「フンギャアァ~」
飛び回る化け猫を相手に、俺らは四方八方へ移動しながら攻撃を加え。
と、化け猫がミツを上から組み伏せ。
「ギィヤアアァァ」
太輔が刀で背中を斬りつけたんだが、こいつ一向に離れようとはしなくて。
ミツは必死で目の前に迫る奴の牙を防いでいるんだけどピッタリとくっつき今にも噛みつきそうな勢いでいる。
「分かっている、でもどうしたらいいんだ」
と、そのとき。
「迷ってはダメ、勇気を出して」心の中で声が聞こえ「礼は人の規律を踏み行う意味の玉、世にいるべきではない化け猫を消せるのは貴方の玉の力のみ」
(分かった、それが俺の役目なんだな)
俺は自分の玉を取り出しジッと見つめ心の中で念じる「光を放て礼の玉そして悪であり存在してはならないあの化け猫を打ち消すんだ」それから刀を構えると。
「太輔、俺を信じてミツ行くよ」精神統一をするかのように眼を閉じ…
俺達は互いに顔を見合わせ微笑みあう、そこへ。
みんなが駆けつけて来て。
ニカが、物凄い勢いでミツの胸を叩き。
(ごめん、みんな)
さすがに太輔もバツが悪そうな顔をしている、けどミツだけはそんな俺らを嬉しそうに見つめていたんだ。
その心の中に、いったい何があったのか?
(最初から、そのつもりで俺達をあそこへつれて行ったんだよね)
そのときになって俺らは初めてそれを知ることになる、玉梓との最終決戦の地で。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!