第114話

記憶の破片⑧横尾side
223
2019/12/19 04:33
俺達は村を出てひたすら歩き続け、ようやく勝田の城の少し手前のところまで来ていた。

藤ヶ谷
よし、ここいらで寝るとするか
北山
んだな
二階堂
えぇ~野宿うぅ
千賀
仕方ないって
宮田
お金ないし
横尾
俺は静かに寝れればどこでもいいよ
二階堂
この人数で、それは無理なんじゃね
玉森
そういうニカが1番うるさいんだよ
北山
ガハハッ
千賀
もう1人ここにもいるけど
北山
どこ?どこ何処
宮田
俺らの最年長おぉ~ニヤッ
北山
お前に言われたかないわ宮田
藤ヶ谷
そうだ、みやも人のことが言えない
じゃん
千賀
えっ
横尾
太輔、ハハッ
二階堂
わっ、ガヤがミツの味方をしている
藤ヶ谷
悪いか
北山
ふっ、藤ヶ谷、アハッ…
玉森
はいはい勝手にイチャついていれば
北山
別にイチャついてなんか
玉森
行くよ廉
永瀬
はいタマさん


暗闇の森の中、それぞれが木にもたれ掛かり疲れた身体を休める。

(俺は途中からだったけど他のみんなは殆どが来た道を戻っているんだから大変だよね)

するとガサッ、ガサガサ、何やら音がし獣らしき気配を感じ。

「なんだろう?」暗がりの中、よーく眼を凝らして見れば2つの眼光が「あれは、もしかして化け猫?なら今度こそ」そう思って立ち上がった、その時。

北山
独りで行く気か横尾さん


後ろで、ミツの声がして。

藤ヶ谷
独りじゃ危険だ俺達も一緒に行く
横尾
ミツ、太輔
北山
仇を討ちたいんだろ
藤ヶ谷
助っ人が2人もいれば安心して
戦えるよ
横尾
‥‥っ


(ありがとう2人とも)

俺達は3人して他の連中を起こさないよう足を忍ばせ化け猫らしき影の後を追った。

北山
いた、あそこだ
藤ヶ谷
油断するなワタ
横尾
分かっている


「ギャアアァァ~」

思った通り現れた姿には、太輔が放った弓矢の傷痕が生々しく眼に残っていて。

横尾
間違いない
北山
よし行くぞ
藤ヶ谷
おう
横尾
2人とも奴に傷を負わされないよう
気をつけて


「フンギャアァ~」

飛び回る化け猫を相手に、俺らは四方八方へ移動しながら攻撃を加え。

北山
ちっ、すばしっこい奴
横尾
危ない、ミツ
北山
うわっ
藤ヶ谷
北山!


と、化け猫がミツを上から組み伏せ。

北山
くっ
藤ヶ谷
この野郎、ザクッ


「ギィヤアアァァ」

太輔が刀で背中を斬りつけたんだが、こいつ一向に離れようとはしなくて。

北山
くぅーっ


ミツは必死で目の前に迫る奴の牙を防いでいるんだけどピッタリとくっつき今にも噛みつきそうな勢いでいる。

藤ヶ谷
くっそ、やっぱり狙いは北山か
横尾
‥‥っ
北山
藤ヶ谷、早く突き刺せ
藤ヶ谷
出来るか、お前まで傷つけてしまう
北山
横尾さん仇を討つんじゃなかったの?やるんだ
横尾
出来ない俺にはミツを傷つけてしまうかもしれないのに
北山
バカやろう今はそんなことを言って
いる場合か

「分かっている、でもどうしたらいいんだ」
と、そのとき。

「迷ってはダメ、勇気を出して」心の中で声が聞こえ「礼は人の規律を踏み行う意味の玉、世にいるべきではない化け猫を消せるのは貴方の玉の力のみ」

(分かった、それが俺の役目なんだな)

俺は自分の玉を取り出しジッと見つめ心の中で念じる「光を放て礼の玉そして悪であり存在してはならないあの化け猫を打ち消すんだ」それから刀を構えると。

藤ヶ谷
ワタ


「太輔、俺を信じてミツ行くよ」精神統一をするかのように眼を閉じ…

横尾
たあぁーっ、ザクッ!
化け猫
フンギャアアァァ~
藤ヶ谷
きっ、消えた
横尾
大丈夫?ミツ
北山
ふっ、やったじゃん横尾さん
藤ヶ谷
ワタ
横尾
俺、父上の仇を討てたんだね
北山
あぁ
藤ヶ谷
よく頑張った
横尾
2人が一緒にいてくれたお陰だよ、
ありがとう


俺達は互いに顔を見合わせ微笑みあう、そこへ。

二階堂
ミツ
千賀
ガヤちゃん
宮田
横尾さん!
永瀬
北山くん
玉森
3人とも大丈夫か?


みんなが駆けつけて来て。

二階堂
バカ、バカバカ、ばか野郎!


ニカが、物凄い勢いでミツの胸を叩き。

北山
いってぇーよ
玉森
勝手に消えるからだろ
千賀
マジで心配したんだからな
宮田
ほんと勘弁してくれる
永瀬
心臓がいくらあっても足りません


(ごめん、みんな)

藤ヶ谷
悪かっ…た


さすがに太輔もバツが悪そうな顔をしている、けどミツだけはそんな俺らを嬉しそうに見つめていたんだ。

その心の中に、いったい何があったのか?

(最初から、そのつもりで俺達をあそこへつれて行ったんだよね)

そのときになって俺らは初めてそれを知ることになる、玉梓との最終決戦の地で。




プリ小説オーディオドラマ