あれから藤ヶ谷は時々俺の様子を見に来ては、また何処かへ出かけて行き。
(いったい何をやっているんだろう?)
俺はこっちでの彼奴のことが全く分からず加えて、どうやったらニカや千賀と連絡が取れるのか検討もつかず困り果てていた。
無事にタマと合流できているのか?今の俺には、
それすら知るすべもなく玉、光らないし。
「結局、自分はなんにもできないんだな情けね」
ふと、そう思った次の瞬間!
(くっ、まただ、なんなんだ?これ肩が焼けるように熱い)
と、ガラッと扉が開き。
(んな…ときに‥何を…言って‥いるん…だか‥ハァハァハァ)
(みっともない自分、口に出したくはないし)
(ちっ、強くなりやがった)
(やっべ耐えられないかも藤ヶ谷の前で叫んでしまいそ)
堪えきれなくなった俺は顔を伏せ、こいつに見られないよう歯を食いしばり踏ん張る。
すると…
俺は、藤ヶ谷が意味不明なことを言って来たもんだから負けず嫌いに火がつき闘争心で。
そう叫ぶと、熱がすぅーっと引き身体の力が抜けていく。
(なんだ?この感覚、以前と変わらない感じがする、おまえ本当に記憶がないの)
立ち上がって、背を向けた藤ヶ谷に俺は話し掛ける。
キィーッバタン、目の前で閉まる扉を見つめ。
(嘘つくなよ何年、俺たち付き合ってると思っている?お前の背中、寂しそうだった、いったい何があったっていうんだ?本当は心の中で泣いているんだろ?俺には分かる)
その言葉が届く日は来るのか?分からないまま日だけが過ぎていく歯痒い思いを胸に。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。