今から少し前、そこが吉原みたいなところだと聞いた俺と廉は。
躊躇していると、店の人に声を掛けられ。
「あいつ意外と積極的だな」そう思いつつ仕方なく自分も後を追って建物の中へ入ると。
ところが、そこに宮田の姿はなく。
今に至るってわけ…
キョロキョロと辺りを見渡す俺達は明らかに挙動不審、しかしそんな俺らの耳に聞こえて来たのは。
(この声、まさか)
物凄い勢いで飛び込んだ部屋の中、目の前に広がった光景。
(バカ、何をやっているんだ)
(廉も、はぁ~)
(ちょ!?)
思わず叫んだ俺と宮田に、ニカは。
こいつ、ちっとも状況が分かってなくて。
(誰か教えてやって)
(あのねニカ、カラオケボックスじゃないんだから、はぁ…)
(あいつ、こうなる事が分かっていながら)
俺は無理やり2人を説得し、この店をあとにする。
「やれやれ、ふっ」苦笑いするしかない俺と宮田。
(あったら大変さ)
でも俺には何となく2人の気持ちが分かる気がした、こっちへ来てから気が張りつめた毎日で最初
は頼りになる人が傍にはいなく特に廉はメンバー
と離れたった独り、どれだけ心細かったことだろう。
それに引き替え俺達にはミツがいた、タマだって
早いうちに俺らと合流をし一緒に行動してたし。
だけど廉は誰とも繋がれないまま記憶まで失い挙げ句あんな事になっちゃって表面には見せないけれど、さぞかし辛かったに違いない。
そう思うと心が締めつけられ苦しくなる「よく頑張ったよ本当に」だからハメをはずしたくなっちゃったんじゃないのかなって、ミツが闇から解放されて1番ホッとしているのは廉なのかもしれないね。
(お疲れさま後はもう俺達に任せお前は大船に乗った気持ちでいていいから、なーんちゃって)
と、前を歩いていた廉が後ろを振り向き輝くような笑顔を俺に向けた。
(ふっ)
俺は、そんな彼奴のところへ走り寄る無邪気な顔に心癒され。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。