第103話

安らぎの時間⑥千賀side
262
2019/12/02 10:17
今から少し前、そこが吉原みたいなところだと聞いた俺と廉は。

永瀬
どうします?
千賀
ん~


躊躇していると、店の人に声を掛けられ。

永瀬
俺達、その人の所へ行きたいんです
連れて行ってもらえます?
いいぜ着いて来な、あんちゃん
千賀
ちょ廉!?


「あいつ意外と積極的だな」そう思いつつ仕方なく自分も後を追って建物の中へ入ると。

主人
いらっしゃいませ初めての方ですね
千賀
あっ、先に知り合いが
主人
どのような方でしょう
千賀
こう鼻がデカくて
主人
でしたら、お部屋の方に
千賀
部屋?
主人
案内いたしますので、お客様を
菊の間に


ところが、そこに宮田の姿はなく。

女郎
主さま、いらっしゃ~い
千賀
うわっ、なに!?


今に至るってわけ…

宮田
千ちゃん、こっち
千賀
えっ、行き止まりじゃん
宮田
マジでか!?
千賀
どこか部屋にでも
宮田
どこかって何処?


キョロキョロと辺りを見渡す俺達は明らかに挙動不審、しかしそんな俺らの耳に聞こえて来たのは。

二階堂
歌いながら叫びながら、Fire Beat'FireBeat'踊りながら感じながらFire Beat FireBeat It's欲しいものに手を伸ばすんだFire Beat'Fire Beat'一瞬のチャンスつかみ取るんだFire Beat Fire Beat It's 行けよ


(この声、まさか)

物凄い勢いで飛び込んだ部屋の中、目の前に広がった光景。

永瀬
二階堂くん最高!
二階堂
廉も歌う?
女郎
なんや、よう分かりませんが面白い
歌ですね
女郎
言っていることサッパリですけど
女郎
その舞い、なんというんです?
永瀬
ダンスっていうんです凄いでしょ?
二階堂
別名 首振り、な~んちゃって、ニカッ


(バカ、何をやっているんだ)

永瀬
二階堂くんはアクロバットも
得意なんですよ


(廉も、はぁ~)

女郎
あっ、あく?
女郎
なんですか?それ
二階堂
見せてやろうか


(ちょ!?)

千賀
ニカ
宮田
廉!


思わず叫んだ俺と宮田に、ニカは。

二階堂
千賀だ宮田もいる、やっほ~
千賀
じゃねぇや
二階堂
なに怒っているんだ?楽しいよ
一緒にやろう
千賀
はあっ?


こいつ、ちっとも状況が分かってなくて。

千賀
おまっ、廉もさ
永瀬
千賀くん俺、こんな経験は初めてで
ワクワクしちゃっています
千賀
はっ?
宮田
あのね、ここは
永瀬
知っています遊郭っていうですよね
千賀
それって
永瀬
もちろん
二階堂
歌って踊って
永瀬
遊べるところ~
千賀
ちがーう
永瀬
んっ?


(誰か教えてやって)

千賀
とにかく帰るよ
二階堂
なんで?まだ来たばかりじゃん
1曲しか歌ってないし


(あのねニカ、カラオケボックスじゃないんだから、はぁ…)

宮田
俺たちタマに羽目られたんだ
千賀
そうなの?原因はタマか、なるほど


(あいつ、こうなる事が分かっていながら)

千賀
取り合えず戻ろう
二階堂
ちぇっ、つまんないの
宮田
ハハッ…


俺は無理やり2人を説得し、この店をあとにする。

二階堂
楽しかったなぁ廉
永瀬
はい、ふふっ


「やれやれ、ふっ」苦笑いするしかない俺と宮田。

二階堂
これも社会勉強のうちさ
永瀬
ですね俺達の世界にはないもの
ですから
宮田
あはっ、確かに


(あったら大変さ)

でも俺には何となく2人の気持ちが分かる気がした、こっちへ来てから気が張りつめた毎日で最初
は頼りになる人が傍にはいなく特に廉はメンバー
と離れたった独り、どれだけ心細かったことだろう。

それに引き替え俺達にはミツがいた、タマだって
早いうちに俺らと合流をし一緒に行動してたし。

だけど廉は誰とも繋がれないまま記憶まで失い挙げ句あんな事になっちゃって表面には見せないけれど、さぞかし辛かったに違いない。

そう思うと心が締めつけられ苦しくなる「よく頑張ったよ本当に」だからハメをはずしたくなっちゃったんじゃないのかなって、ミツが闇から解放されて1番ホッとしているのは廉なのかもしれないね。

(お疲れさま後はもう俺達に任せお前は大船に乗った気持ちでいていいから、なーんちゃって)

と、前を歩いていた廉が後ろを振り向き輝くような笑顔を俺に向けた。

永瀬
千賀く~ん早くしないと置いて
行きますよー


(ふっ)

千賀
待てよ廉!


俺は、そんな彼奴のところへ走り寄る無邪気な顔に心癒され。




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