(まったく賑やかな道中だぜ、ふっ)
千賀や横尾さんが、そんな夢を見ていただなんて
知らず俺達は先の村へ足を延ばしていた。
そして、この先はもう宿を取ることは出来ないだろうとここでも村長の行為に甘えさせてもらうことにする。
(なんせ、この人数だし)
部屋割りは宮田にタマ・永瀬、この3人はスムーズに決まったんだが問題は残りのメンバー。
(あのさぁ~もういい加減にしてくれる)
可哀想なのは、とばっちりを受けたみたいになっている千賀。
(藤ヶ谷が、こんなに妬きもち焼くとは思わなかった)
その日の夜、部屋にいるのが息苦しくて月明かりの中、外へと出てみれば庭の池の畔で佇む宮田の姿があった。
(あいつ、あんな所で何をしているんだろう?)
気になって声を掛けようとした、そのとき。
(なに!?)
とつぜん暗闇から斬り掛かって来た女に慌てて応戦する宮田。
キーン、カーン俺は咄嗟に庇い、そいつと刃を交えたんだが。
女のクセに半端ない、そのうえ尋常じゃない目つきをしている、そこへ。
騒ぎを聞きつけ玉森が駆け込んで来て。
キーン!
玉森を庇い、その刃を自分の刀で受け止めながら
宮田が叫ぶ。
キーン、カーン!
(おまえ…)
(そうか、つまりこの女が玉森の)
「こいつにやらせるしかないんだ」だが、当の本人は。
これじゃ無理そうだな、そう思っていると。
他の連中も駆けつけて来て、それを見た怜香って女は途端に逃げて行き。
あまりの衝撃の強さに震えるタマの肩を優しく抱きしめる宮田。
二階堂が、ボソッと呟く。
そう言って、寂しそうに笑う千賀。
(許せねぇ玉梓、こいつらの心をズタズタにしやがって待っていろ俺がお前を叩き斬ってやるから)
あいつの不気味な笑い声が聞こえた気がした。
俺達はそれぞれの部屋に戻り暗い気分で朝を迎えた、これから待ち受けるだろう様々な試練を予感して。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。