第110話

記憶の破片④北山side
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2019/12/14 03:57
(まったく賑やかな道中だぜ、ふっ)

千賀や横尾さんが、そんな夢を見ていただなんて
知らず俺達は先の村へ足を延ばしていた。

そして、この先はもう宿を取ることは出来ないだろうとここでも村長の行為に甘えさせてもらうことにする。

(なんせ、この人数だし)

部屋割りは宮田にタマ・永瀬、この3人はスムーズに決まったんだが問題は残りのメンバー。

藤ヶ谷
俺が北山と一緒の部屋になるのが
当然だろ
二階堂
そんなことはないミツは俺と一緒の方がいいに決まっている
藤ヶ谷
はっ?


(あのさぁ~もういい加減にしてくれる)

横尾
だったら3人で寝ればいいじゃん健永は俺と一緒でいいでしょ?
千賀
…うん


可哀想なのは、とばっちりを受けたみたいになっている千賀。

横尾
大丈夫、分かっているから
北山
んだか


(藤ヶ谷が、こんなに妬きもち焼くとは思わなかった)

横尾
現世では抑えてた分こっちでは制御が効かなくなっているんじゃない
北山
そう…かな


その日の夜、部屋にいるのが息苦しくて月明かりの中、外へと出てみれば庭の池の畔で佇む宮田の姿があった。

(あいつ、あんな所で何をしているんだろう?)
気になって声を掛けようとした、そのとき。

死ね!犬
宮田
うわっ、カーン


(なに!?)

とつぜん暗闇から斬り掛かって来た女に慌てて応戦する宮田。

宮田
なっなっ、なんなんだよ!?
北山
宮田!
宮田
キタミツ
死ね死ね、死ねぇ~


キーン、カーン俺は咄嗟に庇い、そいつと刃を交えたんだが。

北山
てめぇ闇のもんか
みんな死んでしまえ~
北山
くっ、なんて力だ


女のクセに半端ない、そのうえ尋常じゃない目つきをしている、そこへ。

玉森
姉さん!
宮田
タマ!?
北山
えっ


騒ぎを聞きつけ玉森が駆け込んで来て。

北山
お前、この女を知っているの?
玉森
旅芸人の怜香、俺が世話になった
人だよ
北山
それが、なんで?
玉森
姉さん俺、あさけの分かる?
怜香
あ…さ‥けの?…犬め殺してやるぅ
玉森
姉さん
宮田
危ない、タマ


キーン!

北山
宮田!
宮田
くっ、頼むから目を覚まして
タマのことが分からないわけ


玉森を庇い、その刃を自分の刀で受け止めながら
宮田が叫ぶ。

キーン、カーン!

北山
無駄だ、こいつはもう人間じゃねぇ
玉森
そん…な
宮田
だったら俺は戦う
玉森
宮田!
宮田
タマが世話になった人でも俺の大好きなタマを傷つける事は絶対に許さないから


(おまえ…)

玉森
駄目だ怜香は俺を助けてくれた
恩人なんだ
宮田
分かっている分かっているけどタマ、怜香さんは…もう


(そうか、つまりこの女が玉森の)

北山
救ってやる為には斬るしかないって
ことさ
玉森
ミツ!?
北山
廉がそうしたように


「こいつにやらせるしかないんだ」だが、当の本人は。

玉森
でも姉さんを斬るだなんて俺には


これじゃ無理そうだな、そう思っていると。

二階堂
どうかしたの?ミツ
藤ヶ谷
何があったんだ?
横尾
はっ、もののけ
二階堂
えっ!?
藤ヶ谷
これが
永瀬
女の人じゃないですか
千賀
怜香さん!?この人、怜香さんだ


他の連中も駆けつけて来て、それを見た怜香って女は途端に逃げて行き。

玉森
姉さーん、くっ、なんでどうしてこんな事に俺は、おっ
宮田
タマ


あまりの衝撃の強さに震えるタマの肩を優しく抱きしめる宮田。

二階堂
同じだな多分


二階堂が、ボソッと呟く。

北山
何が?
二階堂
千賀のこっちでの妹も闇になって
しまった
北山
なっ、本当か!?
千賀
俺は、ぬいを斬る
北山
お前…
千賀
それが、あいつにしてやれる最後の
ことだから


そう言って、寂しそうに笑う千賀。

(許せねぇ玉梓、こいつらの心をズタズタにしやがって待っていろ俺がお前を叩き斬ってやるから)

玉梓
ふふふ、アハハハ


あいつの不気味な笑い声が聞こえた気がした。

横尾
とにかく中へ戻ろう
永瀬
そう…ですね
俺達はそれぞれの部屋に戻り暗い気分で朝を迎えた、これから待ち受けるだろう様々な試練を予感して。




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