第128話

最終決戦④千賀side
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2020/01/17 08:10
うつし世の~儚さ想い涙する~
慕うは兄か幻か~


(この声は、ぬい)

ダッと走り出した俺の後ろを「千賀!」叫びながら着いて来るニカ、すると目の前に高台があり屏風が音も立てずスーッと開いた、そこに死して「もののけ」と化した"ぬい"がいたんだ。

ぬい
うふふっ、あはは


周りには、付き従うかのように女衆が。

千賀
ぬい!
二階堂
‥‥っ


(俺だ分からないのか?)

ぬい
ふふふ、犬、死ね!キーン、カーン
千賀
くっ
二階堂
千賀!


覚悟していたはずなのに、いざ目の前にすると気持ちが揺らいでいる自分がそこにはいた。

二階堂
目を覚ましてくれ頼む
ぬい
みんな死ね、あはは、あはははっ


キーン、カーン、心は散々に乱れ飛ぶ。

千賀
ニカ!
二階堂
くっそ、なんて力なんだ


あげく、ぬいは物凄い勢いで連打して来るものだから俺らは攻撃を防ぐのがやっとで。

ぬい
あはっ、あははは


キーン、カーン!
(こんなの俺の可愛い、ぬいじゃない、くっ)

ぬい
死ね死ね死ねぇ、あはははっ


キーン、カーン、キーン!「返してくれ俺の妹を」
悲しみが心を支配し頬には涙がつたって落ちる。

千賀
もうやめてくれぇ~


堪らなくなって叫ぶと2つの玉が光を放ち。

小文吾
千賀殿どうか妹を助けて欲しい
千賀
小文吾
荘介
今こそ我らが力を貸そうぞ
二階堂
荘介


と、その輝きはぬいの身体を包み込み。

ぬい
ぎゃあぁ、くっ、おのれぇ~っ


とたん形相は見る見ると変わっていき、それはまるで闇に蝕まれた苦痛の表情にも見え。

ぬい
お兄ちゃん、た・す・けて


聞こえた来たのは、ぬいが俺に助けを求める声だったんだ「ぬい!」

荘介
今だ
小文吾
あいつを闇から解放してやってくれ


それを聞き決心する。

千賀
ニカ、行くぞ!
二階堂
おう


(待っていろ今、楽にしてやるから)

見つめ合い頷き合う俺とニカ、狙うは「心臓」少しでも苦しめない為に、そして一気に止めを刺すつもりで刀を握りしめると「たあぁーっ」俺達は、2人同時に斬り込んで行く。

ぬい
ぎゃあぁーっ


瞬間!叫び声が耳元で木霊して、刺した感触が手に伝わった。

千賀
あぁ、ぬい…ガクッ
二階堂
しっかりしろ千賀


思わず膝まづいた俺の身体をニカが支えてくれ…「心が痛い、くっ」それは愛しい者を自らの手で
斬ってしまったという悲しみ。

二階堂
くっ…ううっ


ニカも、同じ辛さに耐えているのが分かる。

「ピカッ!」けどそんな俺達の前に、まるで救いの手を差し伸べるかの如く光りが射し込んだかと思うと。

ぬい
ありがとう、お兄ちゃん


元に戻った、ぬいの姿が目の前に現れたんだ。

ぬい
忘れない
千賀
えっ
ぬい
忘れないから独りぼっちで寂しかったとき一緒にいてくれたこと
千賀
…ぬい
ぬい
大好きだよ、もう1人のお兄ちゃん
二階堂
もしかして気づいていたの?


ニカの問いに、ぬいは微笑みながら頷く。

千賀
いつから?
ぬい
会ってすぐゴメンね、それでも傍に
いて欲しかったから
千賀
そっ、ふっ


何はともあれニカと俺はホッと胸を撫で下ろす…が、そのとき。

小文吾
道が開くぞ
二階堂
えっ
荘介
月の道への通路が
千賀
どういうこと?
ぬい
元の世界に戻って、お兄ちゃん
千賀
なっ


今度は、あの時と同じ光りのトンネルが俺らの前に現れ。

小文吾
お前たちは帰れ
千賀
何を言っているんだよ
荘介
それが、あの者の願いなのだ
二階堂
それってまさか


(ミツが…)

千賀
そんなこと出来やしないさ
二階堂
そうだ俺達は最後まで共に戦う、
そうだろガヤ


俺らが後ろを振り返ると「ふっ」と笑って背を向け手を振るガヤちゃん。

荘介
いざ
小文吾
月の道へ
二階堂
ちょ待って俺はミツと一緒に帰るって約束したんだ
千賀
宮っち、ガヤちゃーん


けど、俺らの叫び声は虚しく響き渡るだけで身体は否応なしに光りの中へと引き込まれてしまう。

(嘘だろ?こんなのってあるか~)

俺とニカは、そのまま意識を失い再び目を覚ましたときには目の前に薮がいたんだ。

(裏切りだなんて思っちゃいない、けど一緒に戦いたかった…だから必ず帰って来て)

俺達はひたすら待ち続ける、それを信じ。




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