第11話

思わぬ再会④宮田side
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2019/08/29 02:45
道節さま、お帰りなさい
宮田
ただいま~


(俺だってこんな事したくはないけれど、じゃどう
やって稼げっていうの?)

今日のお仕事は如何でしたか?
宮田
まぁまぁかな、ふっ


ここに来て、もう1年が過ぎる。
では、お食事の用意を致しましょう


初めは、全く意味が分からなかった。

宮田
あれ?ここどこ


とつぜん目の前に尼僧たちが現れ「道節さま」俺のことをそう呼んで。

(はあっ?誰それ俺そんな名前じゃない、なんて言ったっけかな…そう王子)

頭でも、お打ちになられました?


(違うわ!)

それより、なんなんです?その見慣れぬお着物は
宮田
えっ、変?これでも一応おしゃれしたつもり


(デートだったから、ん?誰とだっけ)

すぐさまお着替えを
宮田
ちょ待って離してってば、やだ、わああぁ~
お静かに
暴れないで下さい、もう子供じゃないんですから


俺は、弁慶みたいな格好をさせられてしまい。

では、いつものをお願いします
宮田
はっ?


(なんのこと?さっぱり分からないんだけど)

早く火を出して下さい、みんな待っているんですよ


(火?そんなの出せるわけないじゃん)

もう準備は出来ているんですから


すると、いつの間に置いたのか目の前に大きな釜があり。

手をかざし気合いを入れるのだ


(えっ?)

それを見つめていたら何処からか声が聞こえ、しかし辺りを見渡してもらしき人物はいなく。

お前の為なんだぞ


(なんだって俺が、そんな事をしなきゃならないんだよ)

いいからやってみろ、これは練習なのだ


(練…習?)

今に分かる、これからここで生きてく為に必要なことなのだと


(生きて行く…ため?)

そうだ、それとも何もせず野垂れ死ぬつもりか?


(冗談じゃない誰が分かった、やりゃあいいんだろ?やりゃあ)

俺は、言われた通り釜に向け手をかざすと集中し。

宮田
気合いだ気合い、くうぅ~はああーっ


力を振り絞るかのように叫んだ、すると途端にボッと薪に火がともり。

お見事です、いつもながら道節さまの火炎の術は凄いですね


(マジでついてしまった、これ火炎の術って言うのか)

さぁ、御飯にしましょう
子供
はぁーい


(けど、なんだって俺こんなことが出来るんだろう?てか、その為に火を着けさせたってわけ?これじゃ釜焚き弁慶じゃん、いやもとい道節だった…あは、しかし誰なんだろう?)

どうやら俺はそいつに間違われているらしい、どうしてそうなってしまったのかは分からないけど。

と、そのとき。

子供
道節のおじちゃん、ありがと
宮田
おっ、おじちゃん!?あっ、まぁ…そうだよね君たちから見れば、あはっ
子供
おじちゃん格好いいね僕も火がつけられるようになりたい
子供
わあ~い、ご飯だ
子供
いい匂いがする


次から次へ眼を輝かせながら集まって来る子供たち

(これ…は‥)

子供
美味しいね
子供
うん、美味しい


けど、子供たちが喜んでいる姿を見ていると自然と心が和む。

そう、ここは戦で親を失った子達がいる言わば現代でいう孤児院みたいな所だったんだ。

驚いた!?殆どが百姓とかの子供たちばかりだったから侍なら分かる、なのにさ。

(いつの世も戦争で犠牲になるのは弱い者ってことか)

それからはここで道節としてこの子たちのために銭を稼いでいる、あの子らの笑顔を護るためなら俺は詐欺まがいの事だっていとわない。

この世界は、そうでもしなければ生きてはいけない世の中から。




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