あまりの敵の多さに気がつけば俺らは北山たちと
離ればなれになっていた、最後に見たあいつの眼。
(分かっている心配するな、こいつらのことは俺に
任せ)
連中は俺達が一定位置まで来ると潮が引いたみたいに去って行き。
ニカが、困惑した顔で見上げながら言う。
千ちゃんに言われるまで気づかなかったのかニカはその状況に声も出ない様子で、そりゃそうさ俺達はいつの間にか四方を壁に囲まれていたんだから。
ニカが、悲痛な声を上げる。
俺達は先頭を千ちゃん、その後ろにみやニカを真ん中にし自分は1番後ろからと位置を決め登り始めた。
そしてようやく千ちゃんが上に到達し続いて宮田、登り切ったとたんニカは安心したのかしゃがみ込んでしまい。
宮田と千ちゃんが引っ張って移動させ、やっと俺も到達し。
千ちゃんの言葉で周りを見渡すと、庭園みたな風景で。
取り合えず俺達は奥へと進んでみる事にする、しかしそこで待っていたのは沢山の「もののけの群れ」たぶん何処かの村人か何かだろ、その中に。
死して「もののけ」と化した、この世界での千ちゃんの妹ぬいがいたんだ。
(ニカ、千ちゃん俺らは周りの連中としか戦わない、この娘はお前ら2人でやるんだ手出しはしない)
(みや、お前も手を出すんじゃない)
泣きながら斬り込んで行く2人を見て、みやが堪らなくなって叫んだ。が、俺はそれを制し。
どれだけ2人の心が傷ついてるのか見ていれば分かる、それでもやらせなければ。
この試練を乗り越えたとき、こいつらは元の世界へ戻ることが出来るのだから。
俺と北山は、そう守護霊たちと約束を交わした。「玉梓は俺らが絶対に倒してみせる、だから他の
連中がそれぞれこっちでの縁を斬ったら元の世界
へ帰れる道を開いてくれ」と自分たちが戻れなく
なるかもしれないのを承知の上。
俺はただ黙って成り行きを見守っていた、千ちゃんとニカが無事に戻れることを願いながら。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!