第27話

自分の役割⑩北山side→千賀side
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2019/09/09 14:16
(このままじゃダメだ先へ進まないと)

理由は分からないが、俺はなんだか気持ちが焦っていた。

(北山宏光、しっかりしろ藤ヶ谷には悪いけどここにずっといても何も始まらない今はニカたちと少しでも早く合流することを考えなくては。

たぶん、あの宿に行けば彼奴らの情報も分かるはずだ。それからまた戻って来ればいい、それまで独りにしてしまうけど待っていてくれ)

そう決心し外へ出ようと立ち上がった、そのとき
キィーッと扉が開き。

藤ヶ谷
悪いが、ここから出すわけには
行かない


藤ヶ谷が、中へと入って来てよ。

北山
お前なにを言っている、そこを退い
てくれ
藤ヶ谷
ダメだ
北山
あいつらの所へ行ってやらなければ
ならないんだ
藤ヶ谷
俺には関係ない
北山
メンバーだぞ独りで頑張っている連中だっている
藤ヶ谷
知らないね
北山
宮田や横尾さんの行方も分かってないのに永瀬廉だっているかもしれないんだ、それでも放っておけって言うのか
藤ヶ谷
あぁ、そうさ
北山
くっ


(一体どうしたっていうんだよ?お前は記憶を失っ
てなんかいない見ていれば分かる、なのになんで
そんなことを言うんだ?教えてくれ)

藤ヶ谷
どうしても行くって言うのなら
北山
なんだよ?
藤ヶ谷
俺は、お前を斬る!
北山
なっ!?


(今、目の前にいるのは俺達が知っている藤ヶ谷じゃないのか?)

藤ヶ谷
どうする?北山


冷たい眼で俺を見据え刃を向けている。

藤ヶ谷
ほら構えろ、お前の刀ならそこにある
北山
藤…ヶ谷‥
藤ヶ谷
ここを通りたければ俺を殺してから
行けばいい


(んな悲しいことを言うな、俺がお前を斬れるわけがない、なぁ~藤ヶ谷)

身体の痛みより心の傷の痛みの方が深くて辛い俺はこのときの藤ヶ谷の哀しそうな瞳を絶対に忘れはしない、お前は口に出せば出すほど自分で自分を傷つけていたんだから俺を救う為に。

だからその傷、一生ともに背負って行くよ俺達は
いつまでも同じ罪を背負い歩いて行こう、あいつ
らを裏切ったという背徳の罪を。

あの時は、そうするしか道がなかったのだから。





❲模索しながらも、少しずつ前へ進めばきっと道は
見つかるはず❳


・千賀side

俺達は、またここへ戻って来ていた。

法師
そうですか北山殿が
二階堂
どこに行ってしまったのか見当もつかず参っているんだ
法師
それは御心配でしょう
玉森
なぁ~ここ誰んち?まさか千賀の家とか言うんじゃないよな
千賀
あったり~
玉森
はあっ?一軒家じゃん
千賀
おう
二階堂
じゃなくて、ぬいちゃんがやっている旅館だろ
玉森
なぁーんだ、ふっ
千賀
ぬいは俺の妹だから、ここは俺んち
なの
二階堂
はいはい
玉森
お前に妹なんかいたっけ?
二階堂
小文吾の妹のぬいちゃんだよ
千賀
だから、その小文吾っていうのが
玉森
で、この人は?


(うわっ、ガンスルーされちまった)

法師
拙者はゝ大と申します
玉森
どうも初めまして犬坂毛野です
法師
これはこれは、ご丁寧に恐れ入る
ぬい
お兄ちゃん、お帰り
千賀
あ、ぬい
玉森
へぇ~この仔がぬいちゃん可愛い
じゃん
二階堂
だめっ、ダメだからなタマ
玉森
へっ?なにイキなり、もしかして好きなわけニカ
二階堂
ばっ、ちげぇよ
玉森
ならなんで顔を赤くしているの?クスッ
二階堂
うっせぇ~や


(えっ、ニカがぬいのことを)

千賀
そうなの?
二階堂
うっ


(図星だな、へぇ~クスッ)

法師
賑やかですね
ぬい
ホントなんだか嬉しい、うふふっ
千賀
ぬい
ぬい
あっ、違うよ!そういう意味じゃないから
千賀
ごめん
ぬい
謝らないで大切な仲間なんでしょ?
その為にやらなければならないんだ
って私、ちゃんと分かっているから
千賀
‥‥‥


(結局、俺はぬいの兄貴になるって決めておきながら寂しい思いをさせてしまっているんだな)

そんな彼女を見て、申し訳なく思う。

法師
今回は私も皆さんのお手伝いをさせて頂きましょう
千賀
お…手伝‥い?
法師
はい、しかしその前に1度安房に戻らなければなりません
玉森
なにそこ?
千賀
里見の殿さんがいる所だよ
玉森
ふ~ん、お城?
千賀
まぁーそんなとこ
玉森
行ってみたい
千賀
えっ!?


(タマお前、なんてことを)

法師
そうですか、ならば御一緒しますか?
玉森
いいの?やったぁ~
千賀
おい
法師
よいではないですか千賀殿、皆で旅をした方が拙者も楽しいというもの
千賀
ぁ…はぁ


(いやそうじゃなくいいのかな?俺達だけで行っちゃって、やっぱミツを捜してからの方がいいんじゃ?)

でもタマはすっかりその気でニカは拗ねたまま何も言わず、どんどん話しは進み明日の朝みんなで行くことになってしまう。

(ぬいゴメンね、また寂しい思いさせてしまう)

そう思いながら彼女の方を見ると優しく微笑みかけていて、まるでそれは「気にしないで、お兄ちゃん」そう言っているかの如く俺の心を締めつけ。

(ありがと、ぬい)

そして、その日の夜に俺はなんとも言えない不思議な夢を見たんだ。

小さな小屋みたいな部屋の中にミツがいて、手には刀を握りしめ誰かと睨み合っているみたいなんだけど、その顔は凄く辛そうで

(ねぇ誰を見てそんな顔をしているの?)

俺は、めっちゃ気になり相手の方を見た次の瞬間!

(嘘だろ!?なんで?どうして2人が戦わなければならないんだよ、お願いだからやめて頼むミツ、ガヤちゃん)

千賀
やっ、やめろおぉーっ


叫んだとたん自分の声で眼が覚める、今のはいったい…

ぬい
お兄ちゃん、どうしたの?


それを聞いた、ぬいが部屋の中へ飛び込んで来て。

千賀
なっ、なんでもない夢を見ただけだよ
ぬい
お兄…ちゃん?


(くっ、心が痛い…あんな2人二度と見たくはない)

けど俺は知らなかったんだ、それは現実に起きていた事だったんだってことを。




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