(このままじゃダメだ先へ進まないと)
理由は分からないが、俺はなんだか気持ちが焦っていた。
(北山宏光、しっかりしろ藤ヶ谷には悪いけどここにずっといても何も始まらない今はニカたちと少しでも早く合流することを考えなくては。
たぶん、あの宿に行けば彼奴らの情報も分かるはずだ。それからまた戻って来ればいい、それまで独りにしてしまうけど待っていてくれ)
そう決心し外へ出ようと立ち上がった、そのとき
キィーッと扉が開き。
藤ヶ谷が、中へと入って来てよ。
(一体どうしたっていうんだよ?お前は記憶を失っ
てなんかいない見ていれば分かる、なのになんで
そんなことを言うんだ?教えてくれ)
(今、目の前にいるのは俺達が知っている藤ヶ谷じゃないのか?)
冷たい眼で俺を見据え刃を向けている。
(んな悲しいことを言うな、俺がお前を斬れるわけがない、なぁ~藤ヶ谷)
身体の痛みより心の傷の痛みの方が深くて辛い俺はこのときの藤ヶ谷の哀しそうな瞳を絶対に忘れはしない、お前は口に出せば出すほど自分で自分を傷つけていたんだから俺を救う為に。
だからその傷、一生ともに背負って行くよ俺達は
いつまでも同じ罪を背負い歩いて行こう、あいつ
らを裏切ったという背徳の罪を。
あの時は、そうするしか道がなかったのだから。
❲模索しながらも、少しずつ前へ進めばきっと道は
見つかるはず❳
・千賀side
俺達は、またここへ戻って来ていた。
(うわっ、ガンスルーされちまった)
(えっ、ニカがぬいのことを)
(図星だな、へぇ~クスッ)
(結局、俺はぬいの兄貴になるって決めておきながら寂しい思いをさせてしまっているんだな)
そんな彼女を見て、申し訳なく思う。
(タマお前、なんてことを)
(いやそうじゃなくいいのかな?俺達だけで行っちゃって、やっぱミツを捜してからの方がいいんじゃ?)
でもタマはすっかりその気でニカは拗ねたまま何も言わず、どんどん話しは進み明日の朝みんなで行くことになってしまう。
(ぬいゴメンね、また寂しい思いさせてしまう)
そう思いながら彼女の方を見ると優しく微笑みかけていて、まるでそれは「気にしないで、お兄ちゃん」そう言っているかの如く俺の心を締めつけ。
(ありがと、ぬい)
そして、その日の夜に俺はなんとも言えない不思議な夢を見たんだ。
小さな小屋みたいな部屋の中にミツがいて、手には刀を握りしめ誰かと睨み合っているみたいなんだけど、その顔は凄く辛そうで
(ねぇ誰を見てそんな顔をしているの?)
俺は、めっちゃ気になり相手の方を見た次の瞬間!
(嘘だろ!?なんで?どうして2人が戦わなければならないんだよ、お願いだからやめて頼むミツ、ガヤちゃん)
叫んだとたん自分の声で眼が覚める、今のはいったい…
それを聞いた、ぬいが部屋の中へ飛び込んで来て。
(くっ、心が痛い…あんな2人二度と見たくはない)
けど俺は知らなかったんだ、それは現実に起きていた事だったんだってことを。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。