ゝ大法師と旅を続け数日が経つ俺達はある村の近くまで来ていた、すると久々に風が吹き。
(ざわっ、なに危険?)
風が何かを俺に伝えようとしている、でも前みたいにハッキリとは分からないんだ「なんでたろう?」と、そのとき。
ゝ大法師が、そう叫び。
(この人…が)
そして、俺達に気づき物凄い勢いで突進して来て
「キーン、カーン!」それも無言で何も言わずに
斬り込んで来る瞳はゾッとするほど冷たく俺は、
思わずたじろいでしまい、そしたら「カーン!」
ドシッ!
刀を弾き飛ばされ地面に尻もちをついてしまったんだ、それでも容赦なく追い込んで来る姿は夜叉そのもので。
必死で俺はその腕を掴み目の前に迫って来る刃を
防いだんだけど力の差は歴然としていて「もっ、
ダメだ…やられてしまう」思ったとたんに身体中
に死の恐怖が襲い掛かり。
耐え切れなくなって無我夢中で叫んだ、そのとき
ピューッといきなり突風が吹き荒れ北山という人
は宙に浮き。
(えっ、何が起こったんだよ?)
飛ばされていく姿を見た瞬間に俺の中で忘れていたあの日の出来事が甦る。
(あれは、そう北山くん!どうして?なんで襲って
来たりしたんだ!?ゝ大法師の言う通り闇に引き込まれてしまったってわけ?嘘だろ…)
けど、その眼は冷ややかで以前に演舞場で影時を
演じていたときの如くに恐かった。
もしかして自分がそうしてしまったのかもしれない、あの時この世界へ来たとき俺は確かに北山くんと会っていたから。
(でも、あんな事になるだなんて思ってもみなかったんだ、ただ見知らぬ場所に来て不安で恐く)
思い出してしまった自分が何をしたのか、この手で北山くんを消してしまったこと。
「あぁなってしまったのは俺のせい?」だとしたら自分が何とかしないと、そう思った俺にゝ大法法師はこう言ったんだ「なら救う手立てはただ1つ」と。
それが間違いだったなんて気づきもせず唯一、北山くんを救える方法だと信じて俺は刃を向けた。
「ごめんなさい許して今度こそ正しい方法で助けるから」お願いします、もう1度その笑顔を俺に見せて。
(俺が泣くと風も悲しそうに吹くんだね、ねぇ~君はいったい誰?どうして力になってくれるの?)
まだ俺は、何かを忘れている気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。