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第5話

見知らぬ場所で
❲そこへ行ったとき俺は大切な何かを忘れていた❳



・北山side

(どうして、こんな事になってしまったのか?)

見渡す限り荒れ果てた地が広がる場所で俺は、ただ茫然と立ち尽くしていた。

(ここは一体どこ?なんでこんな所にいるんで?今まで俺は何をしていたんだよ)

考えても、考えても思い出せない苛立ちにドカッと地面を思いっきり叩いたら。

北山
痛ってぇ…固いなぁ~この土
あたり前だ、もう何ヶ月も雨が降っとらん
北山
‥‥っ


(誰で?こいつ)

いつの間に来たのか汚らしい格好をした侍みたいな男が自分の傍に立っていて、まるで時代劇にでも出てくる浪人のような。

お主どこから来た名はなんという?
北山
はっ?人に聞く前にまず自分から名乗るのが礼儀、違うか?
確かに、これは失礼いたした我が名は犬塚番作お主は?
北山
北山宏光、つうか随分と古臭い名だな
番作
そうか?お主こそ変わった名をしておる


(俺が?なにを言っているんだか、このオッサン頭がおかしいんじゃね)

番作
しかも見慣れぬ格好を、それは何処の国の着物だ?
北山
どこって日本に決まっている
番作
ん?聞いた事がない、それに妙な言葉を使いおる
北山
そっちこそ、まるで侍みたいだ
番作
一応は
北山
へっ?
番作
これでも昔は足利家に仕えておった、訳あって今は流浪の身…
北山
ちょ、待て!足利って確か


(どこかで聞き覚えが…そうだ、歴史に出てくる足利尊氏!?まさか、嘘だろ?)

番作
どうした?北山殿
北山
あ、いや、今って何時代
番作
なんのことを言っておるのか、さっぱり分からん
北山
あっ、わりぃ


(そうか、そう呼ばれるようになったのはもっと先の話しって事はやっぱり、えぇーマジか!?やっべ本当にここ室町時代かもしれない)

思いも掛けない現状に、戸惑っていると。
番作
ところで
北山
なんだよオヤジ
番作
おぬし泊まる所はあるのか?
北山
はっ?あるわけないじゃん
番作
なら、うちに来るがよい
北山
えっ、いいの?
番作
どうやら見知らぬ土地に来て困っている様子、遠慮はいらん
北山
助かったぁ、ありがとオヤジ
番作
ん???


こうして俺は、犬塚番作という浪人の家で世話になる事となる。

北山
うっわ~ボロい家、あっ
番作
すまん、なんせ流浪の身なれば
北山
わりい
番作
先程からそう言うが、どのような意味なのだ
北山
悪かったってことさ独りでここに?
番作
息子がいた生きておればお主と同じくらいにはなっていたであろう
北山
‥‥っ
番作
北山殿に少し面影が似ておる
北山
名前は?
番作
信乃、犬塚信乃
北山
へぇ女みたいな名だ、この時代にしては珍しい
番作
この時代…とは?


(まず、つい口が滑った)

番作
北山殿は、本当に不思議な言葉を使いおる
北山
あはっ、つうかその呼び方やめてくれない照れ臭いし
番作
ではなんと?
北山
宏光でいい
番作
さよか分かりもうした
北山
じゃオヤジ暫くの間、宜しく頼む
番作
それは私のことを言っておるのか?
北山
他に誰がいるっていうんだ?なっ
オヤジ
番作
その言葉の意味を教えて欲しい
北山
そうさなぁ~父親みたいなもんとでも思ってくれたらいいんじゃね
番作
‥‥‥


(取り合えず来てしまったものはしょうがない、なんとか帰る方法を見つけないと)

このときの俺はそう思っていた、この先に起こる事など予想だにせず。

その翌日「宏光、できたぞ」オヤジから声が掛かり呼ばれて振り返ると…

番作
どうだ?なかなかのものであろう
北山
これって俺の?
番作
その格好では周りの連中に怪しまれる
北山
あっ、まぁ~確かに


わざわざ俺のために縫ってくれたという着物をオヤジは嬉しそうに差し出し。

番作
どうした?
北山
いや、なんでもね
番作
着てみたらどうだ
北山
おう


そんな姿を見ていたら、自分の父親の事がふと脳裏に浮かんだ。

番作
おぬし親は?
北山
母親と2人
番作
父上殿は、どうされたのだ?
北山
出て行ってしまった
番作
それは、すまぬ事を聞いた
北山
気にすんな、それよりどう?
番作
ん?なかなか似合っておる
北山
ほんと?やったぁ


(んふふっ)

そんなことを言ったせいかオヤジは、それから俺を息子のように扱ってくれ。

北山
これうんめぇ~
番作
新鮮な魚は何よりの御馳走だ


そして1日1日が過ぎて行き徐々にここでの生活にも慣れて来た、その頃…

それは、とつぜん起こる。

うっ、わあぁーっ


(なんだ今の声は!?)

オヤジの代わりに水を汲みに行った俺は、悲鳴みたいな叫び声を耳にし。

(泉の方だ)

辿り着いたそこに血まみれの男が倒れていて、歳は16・7くらい。

(まだガキじゃん)

その傍らに、ベッタリと血の付いた刀を持った男が不気味な笑みを浮かべ立っていてよ。

フンたわいもない、おや?お前は誰だ
北山
あんたが斬ったのか
そうだ
北山
こいつはどう見ても武士じゃねぇ
なのにどうして
試し斬りをしたまで
北山
なっ、ひでぇ事をしやがる
お前も斬られてみるか
北山
ふざけんな!


怒りに身を任せ、睨みつける

やるか?いいぞ相手をしてやる
北山
くっ


(分かっている武器もない俺がこいつに敵うわけなどないと、でも許せねんだ)

素手で挑み掛かろうとした、そのとき。

番作
よすんだ!
北山
オヤジ!?


(いつの間に?)

番作
帰りが遅いから気になって来てみたら
犬塚番作か、こいつはお前のなんだ?
番作
息子だ
北山
‥‥っ
ほほぉ~確か死んだと聞いたが?
番作
こうして生きておる佐母二朗、今日のところはワシに免じ許してやってはくれまいか?
北山
なんでオヤジが謝るんだよ?こいつは罪のない人を殺したんだ
番作
お主の気持ちは分かる、だが今は引け
北山
ちっ
まぁ~いい小僧、俺に挑みたいなら剣の腕を磨くんだな、それがお前のためだ


悔しかった、ここでの自分はなんの力もないオヤジに頼ってばかりでは誰かを護ることすら出来ないんだって。

(強くなりて、くっ)

そして、負けず嫌いの闘争心に火がつく。

北山
くっそぉ~バンッ!


家に帰ったあと、その怒りを俺は壁へとぶつけた。

番作
あやつは網乾佐母二朗あぼしさぼじろう剣の腕では右に出る者はないと言われている
北山
オヤジ頼みがある
番作
なんだ?
北山
俺に剣を教えてくれ
番作
それは構わぬ、が…まさか!?お主
北山
違う、んなバカな事はしない
番作
では、なんの為に?
北山
生きてく為とでも
番作
なるほど、なら馬も教えてやろう
北山
マジで、Thankyou
番作
さっ、サンキューとな?
北山
ありがとうって意味
番作
さよか
北山
クスッ


それから必死で稽古に励む、キーン、カーン!

番作
なかなか筋がいい
北山
少しは、かじっているんでね


(舞台でだけど、クスッ)

が、調子に乗っていたことに俺は気づいていなかったんだ、カーン!

殺陣と本物では違うと思っていたけれど以外とあっさり出来ちゃうじゃんって、けどそんな甘い考えはすぐさま見抜かれ。

カーン!

北山
うわっ、ちっち
番作
雑念は捨てろ、これが真剣ならおぬし斬られておるところだったぞ
北山
‥‥っ


オヤジに、刀を弾き飛ばされてしまい。

北山
くっ


瞬時に刃は喉元の手前で止まっていて、これは死と隣り合わせの勝負なんだと思い知らされてしまう。

(すっげぇーマジで、こいつ強い)

番作
生半端な気持ちで刀を交えると命取りになる、よく覚えておけ
北山
分かった
番作
では参る
北山
おう


キーン、カーン!そして毎日、悪戦苦闘しながらも。

番作
そうではない、こうだ


(くっ、ケツいてぇ)

番作
よいか、馬は敏感に乗り手の心を読み取る心してかかるのだ
北山
あぁ


春が来て夏になり秋がやって来る頃にはだいぶ上達し、遠乗りにも出掛けることが出来るようになり。

北山
ふわわわ、眠いなぁ


そんな、ある日のこと。

晴天の青空を見上げ草むらに寝転びながら俺は初めてここへ来たときの事を思い出していた。

(なんか大事なことを忘れている気がする、なんだろう?)

と、そのとき。

(あれ今、なにか空で光った飛行機?まさかぁ~ここ室町時代だぜ飛んでるわけ)

そう思っていると、ピューンストン!

北山
うわっち、なんだわ


突然、なにかが降って来て思わず咄嗟に受け止め。

北山
玉?


その言葉を口にすると妙に愛着を感じる自分がいる、こう胸がキュンとするような。

透明な玉は時折、ピカッと光りを放ち不思議な感じがした。

それが、凄く大切な物のように思え。

北山
ただいま~


俺は懐に入れ家へと持ち帰ることにし、すると。

番作
お帰り、ゴホゴホ
北山
おやじ風邪か?
番作
いや…そうではない宏光‥話がある
北山
なんだよ改まって
番作
どうやらワシは胸の病に掛かってしまったようだ、ゴホゴホ
北山
胸の…病?


(それって、結核のこと)

番作
お主に…うつすわけに…はいない、今すぐ…ここから…出て行け…ゴホッ
北山
はっ?バカ言ってるんじゃね、んなのできるか
番作
この病は…治らん‥ゴホッ…わしも、そう長くはない
北山
なら、なおさらほっとけない
番作
ゴホゴホ、頼む、言うことを聞い…うっ
北山
オヤジ!


慌てて傍へ寄り、背中を摩ったら。

番作
ダメだ、うつる
北山
大丈夫だって、俺は予防接種をしているから
番作
またわけの分からぬことを、ゴホゴホッ
北山
とにかく寝ていな
番作
悪い…


申し訳なさそうな顔をするオヤジ。

(なにを言っているんだ、たくさん世話になったんだ最後くらい息子らしいことをさせてくれ)

心の中で呟き、微笑みかける。

(男なら恩を忘れちゃならない、そうだろ母さん)

そう思いつつ…

それから冬が来て、また春が来たころにはオヤジの容態は悪化し。

北山
おやじ、オヤジ
番作
泣くで…ない
北山
泣いて…ねぇよ、クッ
番作
この1年…息子と‥暮らせて…幸せだ…った
北山
俺もオヤジはもう1人の父親だ
番作
そう…言って‥くれるの…か
北山
当たり前だ、すっごく感謝しているんだから
番作
宏…光‥上を…見るが‥いい


そう指を差された先は天井、俺が見つめる中オヤジは渾身の力を振り絞り小刀をそこへと投げつけ。

ザクッ、ボトン!

落ちて来たのは、刀が入っているらしき包み。

番作
これは‥村雨丸という…足利家に…伝わる銘刀だ
北山
なっ!?
番作
足利…成氏公‥の…所へ行き‥お返し…すれば主を、ゲホゴホ
北山
オヤジ!
番作
取り…乱すな‥お前は…もう立派な武士なのだぞ
北山
分かった俺は大丈夫だから心配するな
番作
そうか…早く‥元の場所へ…戻れたら…いいな
北山
えっ
番作
お前が…現れたとき‥身体中が…光りに‥包まれ…まるで息子が…天より戻って…来た‥かの…よ
北山
はっ、オヤジ!


そして、そのまま静かに息を引き取ってしまう。

(知っていたのか?俺がこの時代の人間じゃないって事をあのとき分かっていて、ありがとう絶対に忘れない)

涙が、留めどもなく溢れて止まらなくなる。

番作
行け宏光お前はこんな所で止まっていてはならぬ、自分が辿るべき道を前へと突き進めワシはいつでも傍で見守っているぞ


俺は、村雨丸を握り締め外へと出た。

あの時と同じ青い空、自分の中で忘れてしまっている一部分の記憶。

それは、きっと物凄く大切なことに違いないんだと何故だかハッキリと分かる

だから必ず見つけ出さなければならない、気持ちを新たに失われた記憶を求め前へと進み始めてく。

この世に来てから初めて独りとなった、しかし自分の旅はまだ始まったばかりだ。

だが、そこには新たな出会いと仲間たちとの再会が待ち受けていたんだ様々な困難と共に。




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朱桜
朱桜
歴は10年を越えカッコ可愛い最年長が大好き“これからもずっと見続けていたい”そんな大切な存在だから想いの全てを物語に紡いでいます。 私が描く作品は絶対にKiさんは右で、その隣にいるのはFさん。 同じような気持ちをお持ちの皆さん、一緒に彼らの世界で浸りませんか。 宜しくお願いします―
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