それは、確かに横尾くんの声だった。
とたんにピカッと、自分の手の中にあるメガネが
光りを放ち。
俺らは、ただ嬉しくて自分たちがいる場所が何処だかも忘れ口々に叫び。
傍で訳が分からず、その光景を茫然と見つめているシメがいた事に気づかないまま。
が、とつぜん横尾くんは黙り込んでしまい。
(いやいや、だからって)
と、今度は大きな叫び声を上げ皆が驚く中。
意味不明な状況にパニックになっているシメの姿に俺達はやっと気づき。
如恵留が宥めている間に横尾くんは、とんでもない事を言い出す。
もうビックリしたってもんじゃない北山くんは凄く皆が心配していて藤ヶ谷くんに関しては今まで何の情報も入って来なかったんだから。
「まさか今まで全く消息が分からなかった横尾くんが北山くんと一緒にいるだなんて」俺達は予想だにしていなかった状況に驚きザワついていた、それも藤ヶ谷くんと一緒に。
けど、そんな俺達の期待は見事に打ち破られる事となる。
(ったく何を考えているんです2人とも)
「どこまで心配かければ気が済むんですか」本人
たちを前にしたら、そう言ってやりたい心境になる。
横尾さんへ
ごめん俺ら今一緒にいることが出来ないんだ悪い、けどきっと宮田たちが横尾さんのことを捜し出してくれるはず伏姫の祠を知っているか?多分あいつらそこへ来るから、そっちへ向かい合流してくれ俺らのことは心配いらない2人一緒だし、じゃまた会おう。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─北山宏光
何をやっても空回りしている自分たちが情けなかった、だけど俺らはこっちで待機しているしかない。
でも薮くんは違っていたんだ自分から行動を起こし凄いなって思う、その勇気を本当はめっちゃ恐かったんじゃないのかな?って。
「自分の身体を張ってまで北山くんを護った薮くんを俺達は誇りに思います、だから早く目を覚まして下さい、みんな待っていますから」
月の道は何処までも続く…
いつまでも俺達は共に歩いて行こう、これからもずっと一緒に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!