(ねぇ~ガヤさんキタミツと2人して俺らには内緒で何を企んでいるわけ?)
(誤魔化さないで俺やっと分かったんだ、あのとき
キタミツと2人で合流したがらなかったのは何で
なのか秘密にしていることがあったからだろ?)
(ガヤさんもキタミツも自分たち以外は全員先に帰すつもりでいる違う?けど俺はそうは行かないよニカみたいにこっちに惚れた女もいなければ千ちゃんみたいに家族もいない、そうだよね道節?
ふ~ん答えないわけ、お前は俺の守護霊なのにどうして北やんの言うことを聞くんだよ)
言われて見ると、確かに光を放っている「ここまで来て何だっていうんだろ?」
(千ちゃんから携帯に着信があった)
そう言うと、チラッと横目でガヤさんを見る。
俺の態度に、苦笑いするガヤさん。
(当たり前じゃん俺達をのけものにして横尾さんだってきっとそう思っているに違いない)
(またそれ…)
(何が?その言葉の意味が分からない)
けど俺は後で知る、ガヤさんもキタミツも辛かったんだって事を。
(ごめん…)
ガヤさんまでもが引き戻されて来たとき、その慟哭に俺は言葉を掛けてあげる事すら出来なかった。
(北やん、皆が北やんの無事を願っているよ分かるでしょ?メンバーを仲間を騙した罪は重い、ちゃんと戻って償って!じゃなきゃ許さないから)
その笑顔を思い出しながら信じて待ち続ける、月の道で。
・横尾side
「いったい何を考えているの?ミツ」その視線は、恐いくらいに鋭い。
その言葉に、初めて俺は気づく。
「ミツの視線が鋭かったのはそれが原因?」暗闇の奥、そこに2つの眼が光っている。
俺達が構えた次の瞬間ザザッと黒い影が飛び出し。
俺は、とつぜん現れたその姿に驚愕した。
優しかった瞳は、金色に怪しく光っていて。
キーン、カーン!耳に響くその声に咄嗟に刀を抜き応戦する。
キーン、カーン!
そして、なんとか反射的に攻撃を交わすも俺はあまり運動神経がよくない、そのうえ父上の威力は半端なく。
が、ふだんローラーを履いて踊っていたことが幸をそうしているみたいで。キーン、カーン!
しかし「これじゃ体力が持たない」そう思いミツの顔を見れば裕太のときと同じジッと見つめていて。
(独りでやれってか、くっ)
キーン、カーン!
キーン、カーン!
(キーン、カーン!それって、どこ?)
「ミツ?」俺が再びその顔を見ると、そうだと言わんばかりに頷いた。
(そういう事だったんだ、キーン、カーン!だから、手を出さないって)
俺はゝ大法師と廉の戦いを思い出す、そしてやっとミツと太輔の意図を理解したんだ。
(つまり自分で繋いでしまった縁は自分で断ち切れ、そういうこと?)
「そうだよワタ」太輔の声が、聞こえたような気がする。キーン、カーン!
俺は意を決し再び刀を構えた、ならこの試練を絶対に乗り越えてみせると「見ていて、ミツ」気持ちも新たに父上と向き合い。
と、そのとき上から俊くんと太輔の声がして。
見上げると、一段高くなっているベランダみたいな所に2人の姿が見え「だいじょうぶ俊くん、これは俺の戦い最後まで諦めずに頑張るよ」
俺は、息を整え斬り込むチャンスを伺う。
(この声は大角)
(えっ)
(分かった)
言われた通りに俺がすると、ふわっと身体が何かに包まれたような気がし。
ザクッと、とたん鈍い音と共に嫌な感触が手のひらいっぱいに広がって眼を開けたら父上を抱きしめている男の人が見え。
(あれ…は)
すると目の前に光りが射し込み瞬く間にトンネルが現れ身体がその中へと包まれていく「月の道で会おう」トッツーが最後に言った言葉、自分たちも今からそこへ行くからと。
俺はもう1度、ミツの顔を見つめた。
(えっ、なに?なんて言ったのミツうぅーっ)
そして意識を取り戻したとき、そこには薮の笑顔があったんだ。
俺の頬に一滴の涙が、したたり落ちる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。