記憶を取り戻した俺は、あることが気になり始めていた「どうしてあのとき風は俺と北山くんの邪魔をしたのか?」ということ。
そう言いながら、ゝ大法師は目の前にある祠をジッと見つめていて。
その言葉を聞き何だか俺は違和感を覚える、この時その意味に気づいていれば俺はあんな事をしなかったのかもしれない。
(ふわっ、んっ?風)
一瞬、頬を撫でられたような気がし過ぎ去った方向へ目を向けると。
(あれ?この祠…)
ここでも変だって気づけば俺は北山くんに刃を向けたりしなかったに違いない、けど闇に染まり襲い掛かって来た北山くんと先に会ってしまっていたから俺は逆に考えてしまったんだ。
「早く早く闇から解放しないと他のみんなも傷つくかもしれない」って、偽物と本物の区別もつかないだなんてさ。
(俺、バカだよ)
しかしゝ大法師のことを全くと言っていいほど疑ってはいなかった俺は信じてしまい親兵衞は一生懸命教えようとしてくれていたのに、そんなことも後になって気づく。
そう風は亡くなった犬江の侍さんの息子、親兵衞だったんだ「俺が父上に会う前に君は、そうなんだろ?だから傍にいた」役目を果たせなかった自分の代わりに、それを託そうと。
「何も知らずに逝ってしまった犬江の侍さんゴメンなさい、もっと早くに気づいてれば心残りなく逝けたのに」そう思ったら申し訳なく思う、けどそのぶん頑張らなければとも思った。
「俺の記憶を消したのも君だね?」そのショックから闇に隙をつかれ取り込まれない為に護ろうとし、なのにそんな彼の思いまで無駄にしてしまい。
「泣くな親兵衞、俺がんばるから」俺らの世界でだったらまだ中学生のはずの君が一生懸命大役を果たそうとしたんだ誰も責めたりなんかしないよ。
俺と北山くんを引き離したことをずっと後悔していた、そう後になって言ってたけど俺は全く恨んでいない。
「これからは友達、一緒に玉梓をやっつけに行こう」大切なものを護る為に戦う、それが男だと思うから。
そして北山くんとの再会がもうすぐ目の前に迫って来ていた、大好きな玉森くんとも。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!