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第2話

アフタヌーン・ティー
2,289
2019/05/15 22:57
グルッペンが引き起こした隣国戦争も締結を迎え、幹部達にとって久しぶりの休暇となった今日この頃。
それぞれが思い思いの休日を満喫する中でエーミールは、静かな森の中に佇む小屋の中でアフタヌーン・ティーの準備を勧めていた。
程良く甘い香りを放つ、焼き立てのアップルパイをオーブンから取り出して白の皿を六枚程度取り出す。
ゾム
エーミールッ!来たでー!
そんな声と共に天井裏から現れたのはゾムだ。
薄らと苦笑しながら、普通に入って来られないものかと考える。
彼が来たということは、もう間もなく他の四人も到着することだろう。
ゾムが現れたことによって急ピッチで押し勧められる茶会の準備にも拍車がかかる。
ようやく全ての準備が整った頃。
グルッペン
エーミール。来たゾ!
グルッペンの声と共に小屋の玄関ドアが開けられる。
グルッペンの後ろから、トントン、ひとらんらん、ショッピが続いて姿を現し、エーミールに軽く声を掛けた。
それにエーミールが笑って返せば全員が席について駄弁り始める。
そんな声を聴きながら、慣れた手付きでハーブティーを人数分淹れる。
テーブル中央に並んだアップルパイ等の茶菓子類に好きに手を付けるように告げれば、エーミールは書斎へと消えた。
しん、と水を打ったように静かな空間だけが残される。
主催者が居ない茶会等、本当に楽しめるはずが無いだろう。
トントン
エーミール、疲れてるみたいやな…
トントンの言葉に静かに面々が同意する。
久しぶりの休暇位、ゆっくりすれば良かったのにと、口々に意見を言い合う。
結局、今日の茶会はお開きにして後日改めて集まろうと言う事になった。
グルッペン
エーミール。悪いが今日は帰らせて貰うゾ?
お前も、ちゃんと休むべきだ。
グルッペンがドア越しにそういうも、書斎の中からエーミールの反応はない。
グルッペンが耳を澄ませても聞こえて来るのは風で靡く紙の音だけだ。
カチャ、と小さな音を立ててドアが開く。

ーー机に積み重なった本の隙間から、エーミールの黄金色の髪が覗いた。
軍用書や参考書類の中で、静かに目を閉じるエーミールに近寄る。
グルッペンが肩を叩くがエーミールが起きる気配はない。
クス、と笑ってはグルッペンは自分が身に着けている黒色のジャケットをエーミールの肩にそっとかけた。
グルッペン
Good Night.
未だ起きないエーミールに笑い掛けて、グルッペンはトントン達と共に小屋を後にしたのだった。

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